dSPACEのDS5366 Smart Charging Interfaceは、スマート充電テクノロジの開発およびテストを行う自動車メーカーや充電ステーション事業者向けの完全なソリューションを提供します。このソリューションは、国際規格と国内規格の両方に準拠しており、相互運用性を保証しています。

電気自動車のための新しい充電テクノロジを開発する際、充電速度は最大の関心事です。車両に交流で充電した場合、車両のAC/DCコンバータにより充電速度は比較的遅くなります。しかし充電に直流が使用されれば、コンバータを外部の充電ステーションに接続することができます。こうした外部システムには、サイズや重量などに制限がありません。それゆえに目覚ましい充電速度を得ることができるのです。ただし、バッテリの充電プロセスを最適かつ安全に保つには、非常に多くの情報の授受が必要になります。

国際規格が切り開いた新たな可能性

国際的なISO 15118や、日本のCHAdeMO、および中国のGB/T27930などの規格が、スマート充電システムの制御や将来的な課金プロセスにとっての新たな可能性を開拓してくれています。それらが相互運用性の必須条件を設定してくれますし、スマート充電の戦略開発における基礎となります。たとえば、利用可能なエネルギー、線間容量、またはユーザからのエネルギー要件に応じて充電速度が制御できるといったことです。

ネットワークの過負荷を回避

従来のAC充電システムは、充電プロセスを始める前に、極めて簡潔なチェックをしているのみです。たとえば最大充電電流は、充電ステーションの電流制限や車両の充電ケーブルの実電流容量によって決められています。しかし急速充電方式が確立されれば、これまでの無秩序な充電プロセスの日々は終わりを告げるのです。ISO 15118およびDIN SPEC 70121準拠の直流を使用した充電プロセスでは、既存の制御パイロットピンの低レベルPWM通信に高周波の高レベル通信を付加することで、車両がHomePlug Green Phy規格に準拠した電力線通信(PLC)によって充電ステーションと暗号化通信を確立できるようになります。

この際、信号レベル減衰特性評価(SLAC:Signal Level Attenuation Characterization)メカニズムによって適切な接続設定が保証されるため、高レベル信号のクロストークによる車両と近隣の充電ステーションとの誤接続も防止できます。また、電磁誘導充電では、通信のやり取りがWLAN経由で行われます。簡潔に言えば、充電プロセスが始まる前に、価格、充電プロファイル、ステータス情報などの情報交換がなされるということです。充電プロセス中は、充電状態やエネルギー消費に関する情報が継続的に車両に送信され、

充電プロセスが終了すると、コネクタのロックが解除され、暗号化された請求書データが充電ステーションのオペレータに送られます。車両と充電ステーション間の通信に使用できるだけでなく、ISO 15118規格は、ネットワーク過負荷を回避できるインテリジェントなネットワーク制御の理想的な基盤をももたらしてくれます。CANを使用した規格であるCHAdeMOやGB/Tベースの充電テクノロジにも、一般的にISO 15118と同様の充電通信機能が備わっています。

この図は、DS5366 Smart Charging Interfaceの代表的な使用例を示しており、各種充電ステーションで実際の車両とその動作をテストする様子、および充電プロセスに関連する複合テストベンチで制御ユニットと電源コンポーネントをテストする様子を表しています。DS5366 Smart Charging Interfaceは、CAN FD経由でシミュレータに接続され、電気自動車給電機器(EVSE)の通信コントローラをシミュレートします。Simulinkモデルを作成すれば、考えられるタイミングやメッセージの操作など、充電ステーションの完全な挙動をシミュレートすることが可能です。
車載バッテリの充電方式は2種類あります。

シンプルな統合:新しいDS5366 Smart Charging Interface

新しいdSPACEのDS5366 SmartCharging Interfaceは、総合的なテストオプションや動的モデルの総合的シリーズをもち、車載充電器や充電ステーション、さらに将来的には電磁誘導充電システムの開発者の皆様を支援します。本製品を開発するうえでの主要な要件は、既存のテストシステムとの円滑な統合と、顧客要件に応じて柔軟に調整できるテスト深度でした。本製品の操作は電気的レベルでもプロトコルレベルでも可能です。

また、すべての通信イベントを包括的にロギングできるため、意図した動作やプロトコル仕様との適合性を手作業または自動でチェックし、エラー診断を実行することが可能です。代表的な適用例は車載充電器や充電ステーションのテストで、特にさまざまな充電規格に準拠した通信モジュールのテストに適しています。

通信エラーのシミュレーションです。本製品は多様な種類の充電ステーションをシミュレートし、エラーなしにECU機能を保証することができます。

DS5366 Smart Charging Interfaceの一般的な用途

DS5366 Smart Charging Interfaceの代表的な適用例は、車載充電器や充電ステーションのテストです。特に、さまざまな充電規格に準拠した通信モジュールをテストすることができます。通信エラーのシミュレーションです。

その他の適用分野:車載充電器の開発

また、多数の車両をシミュレートした環境と開発した充電ステーションとの間で互換性をテストすることも可能です。本ソリューションのもう1つの重点分野は、車載充電器の開発です。本ソリューションを使用すると、車載充電コントローラの開発時に充電通信用のソフトウェアやハードウェアが使用できない場合でも、本ソリューションで車両のECUや通信コントローラを置き換えたプロトタイプ車両に基づいてテストを実行することができます。

ASMツールスイートを使用したターンキーテスト環境
描かれた曲線は、40分間にわたるDC急速充電プロセスの進行状況を示しています。

ASMツールスイートを使用したターンキーテスト環境

dSPACEのツールスイートであるASMは、モーター、ビークルダイナミクス、エレクトリックコンポーネント、およびトラフィック環境のシミュレーション用ツールであり、リアルタイムな高電圧バッテリのシミュレーションを含め、バッテリ駆動式電気自動車向けのターンキーアプリケーションを提供します。また、ASMの各モデルには充電ステーションのエミュレーションモデルも含まれています。このエミュレーションでは、テスト対象の充電制御ユニットに応じて車両の消費電力が決定され、充電電圧が変化します。充電コントローラを入手できない場合は、定電流定電圧(CCCV)充電プロセスを使用するコントローラをASMでシミュレートできます。

さらに、制御ユニットとの通信に必要なすべての信号を利用可能なデモモデルも用意されているため、CHAdeMO、ISO 15118、およびGB/T 20234.2などの規格に準拠しながら制御アルゴリズムやすべてのデバイス間のインターフェースをテストすることができます。

dSPACE MAGAZINE、2020年1月発行

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