発表日: 2015年09月14日 |
Sean Carlson、シニアアプリケーションエンジニア、dSPACE Inc.
自動車および航空宇宙産業アプリケーションがますます複雑化するにつれて、電子制御ユニット(ECU)は他のコントローラから入手する車両全体および環境情報にますます依存するようになっています。この情報はさまざまな通信ネットワーク、CAN、LIN、ARINC 429やその他の従来のバステクノロジを介して共有されます。センサや分散制御の数が増加するに伴って、これらの通信バスは要求を満たすために大幅な改良が必要になっています。
自動車産業では、バス通信において、CAN、LIN、LVDS、FlexRayなどのバスやプロトコルがしばしば混在しています。航空宇宙産業では、ARINC 429とMIL-STD-1553が一般的な航空電子機器データバスとして使用されています。どちらの分野でも、現在普及しているバスは全般的に古くなり、最新のシステムに必要な帯域幅が不足しています。これは特に、最新の自動車では先進運転支援システム(ADAS)や複雑なインフォテイメントシステムで明らかであり、航空宇宙産業では電動化が進んだ航空機の開発で明らかです。
その結果、業界ではこれらの要求の一部に対処するためにEthernetテクノロジの使用に注目しています。最新の車両ネットワークの一部では、すでに使用が始まっています。
Ethernetは、センサやECUなどのネットワークデバイスに対し、標準的かつ高速でコスト効率に優れたテクノロジを提供します。Ethernet規格では、ネットワークの物理層とデータリンク層が定義されます。ネットワークの上位レベルの機能は、一般的にTCPおよびUDPプロトコルによって実装されています。
TCPは「接続指向」のプロトコルであり、ある程度のオーバーヘッドや速度低下があっても高い信頼性が得られます。TCPは、リクエストと応答のクライアント/サーバモデルを使用して、予期されたデータ受信を保証します。たとえば、メッセージが受信されなかったり、データが予期されたものでなかった場合でも、それを再送信することが可能です。
それに対して、UDPはよりオーバーヘッドの小さい単純なプロトコルであり、メッセージの配信が保証されません。特定のケース、特にリアルタイムシステムでは、送受信メカニズムが単純であるほどデータレートが高くなりレイテンシが低くなります。そのため、UDPが適しています。
最新の自動車には、複数のカメラやレーダーやLiDARといった高度なセンサで構成されたADASシステムが搭載されています。これらのデバイスでは、処理のためにECUに送信する必要がある膨大なデータが生成されるため、しばしばEthernetが使用されます。
Ethernetは、Vehicle-to-Everything(V2X)テクノロジでも重要です。たとえば、車両とインフラ間の無線通信では一般的なWiFiテクノロジが使用されています。
Ethernetは、計測や適合、ECUのフラッシュでも使用されています。XCPは複数のトランスポートメディアで使用できます。そのため、一般的にこれらの操作は標準的なプロトコルであるXCPを使用して実行されます。
この目的でCANが一般的に使用されていますが(XCP on CAN)、CANは高いデータレートを提供できません。トランスポート層としてEthernetを活用することにより、はるかに多くの変数の計測や適合が可能になり、大規模なECUアプリケーションのフラッシュを大幅に高速化することができるようになります。
Ethernetを利用したECUトポロジによって主要な車両サブシステムの接続や、サブシステム内のデバイスのデータレートの向上が実現します。
航空宇宙産業分野では、ARINC 664がEthernetをベースとした通信規格であり、次世代データネットワークとして設計されています。多くの既存の航空機では、一方向のみで動作するARINC 429が使用されています。
最新の航空機で一般的な大規模なARINC 429ネットワークでは、膨大な数の送受信チャンネルが必要となり、各チャンネルは2本のワイヤで接続する必要があります。その結果、複雑で重いワイヤーハーネスが必要となります。さらに、ARINC 429のメッセージは32ビットで、最大データレートは100 Kbit/sに過ぎず、最新のシステムではデータ量が不足します。
Ethernetに基づくデータネットワークを使用することにより、大規模なARINC 664ネットワークをスイッチを介して接続できます。100 Mbit/sの全二重トランシーバと最大1518バイトのEthernetフレームを使用すると、大量のデータをARINC 664で交換することができます。また、ARINC 664は、(帯域割り当てギャップと呼ばれるトラフィック制御メカニズムを通じて)冗長性や決定性などの航空機ネットワークに必要な機能も備えています。
自動車および航空宇宙産業アプリケーションでますます増大するお客様のEthernetの使用をサポートするため、dSPACEでは数多くのハードウェアおよびソフトウェアツールを提供しています。
DS1007やMicroLabBoxなどの新しいハードウェアプラットフォームには、ギガビットEthernetアダプタが内蔵されています。モジュール型プラットフォームも、Ethernet機能を使用して拡張できます。さまざまな製品やソリューションブロックセットでソフトウェアサポートが利用できます。これらの製品は、他のdSPACEバスブロックセットと同じように簡単に使用できます。ARINC 664などの航空宇宙産業バスのサポートは、サードパーティ製ハードウェアとモデル統合用のdSPACEブロックセットを組み合わせたソリューションとして提供されます。
最新の自動車および航空機エレクトロニクスではデータネットワークの機能強化が必要であることは明らかです。Ethernetベースのネットワークを使用すると、標準的でコスト効率に優れたコンポーネントを通じて高いデータレートを提供することができます。dSPACEは数多くのハードウェアおよびソフトウェア製品を提供することで、Ethernetを活用したECUの開発を促進しています。
NEW:RTI Ethernet Blockset | RTI Ethernet (UDP) Blockset | Ethernet Configuration Package | |
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追加で必要なハードウェア | – |
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目的 | DS1007とMicroLabBoxをEthernetデバイスに接続。DS1007ベースのリアルタイムシステムでバイパスアプリケーションをサポート。 | dSPACEリアルタイムシステムをEthernetデバイスおよびネットワークに接続。バイパス処理に最適。 | 自動車用ミドルウエアSOME/IPをサポート。dSPACEのDS1006ベースのリアルタイムシステムを、Ethernetデバイスおよびネットワークに接続 |
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