自律型航空機の開発とテスト
無人航空機(UAV)は、危険なミッションや単調な仕事をこなすのに理想的です。UAVでは、最大限の自律性を確保するために、自らの周辺環境を知覚する「感覚器官」と、インテリジェントなミッション制御ソフトウエアを必要とします。ドイツ航空宇宙センター(DLR)ではこのようなUAVを開発するために、dSPACEシステムを使用して、 試験施設で仮想的な試験飛行を行っています。
人工的な感覚器官
最新のUAVは事前に計画された通過点に沿って飛行することができ、一部の機種では自動的な離着陸も可能です。しかし、それらの中に一般の空域での運用が可能であったり許可されているものはありません。現時点では、その周辺環境を「見て」適切に対応する方法が備わっていないからです。これを実現させるには、UAVにその周辺環境を捉える画像センサが必要になります。このような画像センサの例として、光学カメラ、レーダーシステム、レーザースキャナなどが挙げられます。飛行制御で使用するには、センサからの計測データを最適な速度で(理想的にはリアルタイムで)処理する必要があります。この場合、知能の役割を果たす機内に搭載されたコンピュータがこのデータに基づいて決定を下します。例えば、飛行経路を計画したり、緊急時にミッションを中止することもできます。
dSPACEシステムを用いた仮想的な試験飛行
UAVの飛行制御コンピュータが正しく機能をしていることを確認するために、DLRではdSPACEシステムを使用して、UAVの各種センサ(加速度センサと回転速度センサ、ソナー、磁力計など)、環境条件、飛行力学、およびアクチュエータ動特性のリアルタイムシミュレーションを行っています。風、センサノイズ、センサ故障などの追加の条件も、dSPACE ControlDesk試験用ソフトウエアを使用して、簡単に設定することができます。飛行制御コンピュータはシミュレーションを使用して、飛行コマンドを生成し、dSPACEシステムに送ります。dSPACEシステムでは受け取ったコマンドを使用して対応するセンサデータを計算します。この手順により、飛行制御コンピュータは、実際の試験飛行とまったく同じ状況で、試験施設内での飛行ミッションを遂行できるようになります。
未知の地域上空の自律飛行
その後、この試験航空機は、実際の飛行ミッションによる厳しいチェックに合格する必要があります。試験施設でのシミュレーションにより、システム動作のほとんどは確認済みのため、後は適切なパラメータを設定し、シミュレーションでは再現できないいくつかの状況を調査するだけで済みます。このプロジェクトの結果として、ARTISシステム(ARTIS = Autonomous Rotorcraft Testbed for Intelligent Systems:インテリジェントシステム向け自律型回転翼航空機テストベッド)が開発されました。ARTISシステムは、未知の地域を移動しながら、その周辺環境の地図を完全に自立的に作成し、その環境内を衝突無しで運行できる、世界でも数少ない自動ヘリコプタの1つとなっています。