自動運転からゼロエミッションまで – 将来の車載プロトタイピングとして、dSPACEは新しいMicroAutoBox IIIを発表しました。業界で実績のあるMicroAutoBox製品ファミリをさらにいっそう強化した次世代製品です。MicroAutoBox IIIは未来のアプリケーションに向けた最先端をいく開発システムであり、さまざまなアイデアを速やかに実際の車両の機能へと変えていきます。
dSPACE MicroAutoBoxは、20年以上にわたり世界中のほぼすべての自動車メーカーやサプライヤ、サービスプロバイダによって使用されており、機能開発(ラピッドプロトタイピング)向けの堅牢な小型車載システムとして実績を挙げてきました。当社では、このシステムをはるかに強化し、向上させた第3世代のMicroAutoBox IIIをリリースしました。クアッドコアのARM®プロセッサ、バスおよびネットワークの総合的なサポート、多数の拡張オプション、および高度な機能安全監視機能(2020年の予定)により最新のMicroAutoBoxは、真に最強のプロトタイピングシステムとなります。また、本製品は、電子制御ユニット(ECU)全体を置き換えたり(フルパス手法)、既存のECUに機能やI/Oを追加する(バイパス手法)ためのスタンドアロンユニットとしても使用できます。
ターボモードへの移行
制御アルゴリズムはこれまで以上に複雑化しており、処理能力の大幅な向上が不可欠となっています。それに対応するため、MicroAutoBox IIIの各コアは、前世代のMicroAutoBoxに比べて最大で16倍高速化されており、ARMプロセッサの4つのコアのすべてがモデルの演算処理に使えるようになっています。また、MicroAutoBox IIIでは内蔵フラッシュメモリとワーキングメモリの両方をMicroAutoBox IIと比較して大幅に増大させることで、大規模なモデルも実行できるようにしています。
良好なネットワーキング
新しいMicroAutoBox IIIは困難な通信タスクをも引き受けられるよう整備されています。膨大な数のアナログおよびデジタル入出力に加え、複数のEthernetインターフェースも強みとしているからです。また、ホストやPCシステムなどの他のデバイスに接続するための標準Gigabit Ethernetインターフェースも3つ搭載されています。さらにMicroAutoBox IIIは最大転送速度100 Mbit/sまたは1,000Mbit/sでECUネットワークへの統合可能な2つの車載Ethernetインターフェースも提供します。MicroAutoBoxのバリアントによっては、シリアルインターフェースや、CAN、CAN FD、LIN、FlexRay通信用のインターフェースも利用できます。加えて、全く新しい専用バスおよびネットワークバージョンであるMicroAutoBox III(DS1521)がまもなく発売されます。幅広いインターフェース(CAN FD×8、FlexRay AおよびB×2、車載Ethernet×6、LIN×3、DIO×6、ADC×4、シリアルインターフェース×1)と、よりいっそう強力なバス性能を持っているため、このDS1521というバージョンは高性能のネットワーキングを要するアプリケーションに理想的に合致します。この将来のバージョンでは、インターフェースの数が不足した場合に備え、これらのバスやネットワークボードを2枚に増やすことも可能です。すなわちMicroAutoBox IIIは、監視コントローラやゲートウェイアプリケーションなど、のちに中央制御ユニットにおいて実行されるシナリオにとって理想的なプロトタイピングシステムであるというわけです。
機能安全面に対する注視
MicroAutoBox IIIはさらなる向上を提供していますが、特にそれは機能安全の領域において顕著です。障害が発生した際に迅速かつ適切に対応できるためには、成熟した総合的な安全コンセプトが不可欠です。妥当性確認のレベルを高めることを目的として、特にプロトタイプ車両を用いた運転支援機能や自動運転機能のテストドライブが実際の道路でより頻繁に行われています。そのようなシナリオにおいてMicroAutoBox IIIをシンプルに利用するために、このシステムでは自動車業界で確立されたEGAS安全コンセプトに基づいた3段階の機能安全コンセプトを提供しています。MicroAutoBoxのモニタリング機能には、障害を検出して定義された状態にシステムを移行させるメモリチェック機能やチャレンジレスポンスモニタなどがあり、その機能が車両の包括的な安全コンセプトへの統合を促進してくれます。
総合的なソフトウェアサポート
ハードウェアに加えて、付属のソフトウェアにもMicroAutoBox IIIユーザに向けた大切な役割があります。SCALEXIOの場合と同様、実績のある実装ソフトウェアをConfigurationDeskおよびBus Manager形式として利用することができます。このことがユーザがMicroAutoBox IIIとSCALEXIOハードウェア間でSimulink®モデルを移行するのを簡単にし、そしてConfigurationDesk/BusManagerの既存のI/O設定はさまざまなSimulinkモデルに転用することも可能です。将来的には、MicroAutoBox IIIはバーチャルECU(V-ECU)やFMUによって再現されたAUTOSARソフトウェアコンポーネントも実行できるようになる予定です。これらも、ConfigurationDeskまたはBus Manager経由での統合が可能です。
さまざまな状況に完全に適合
MicroAutoBox IIIにはさまざまなバージョンが用意されているため、プロジェクト固有のI/O要件に合わせて柔軟に調整することができます。2019年末に、4つの標準バージョン(1403/1511、1403/1513、1403/1511/1514、および1403/1513/1514)がリリースされました。ユーザの皆様がMicroAutoBox IIとして既にご存知のものです。新しいバスおよびネットワークバージョン(1403/1521、1403/1521/1521)は2020年に発売されます。さらに、MicroAutoBox IIIは、Intel® Xeon™プロセッサ、10 Gbit Ethernetインターフェース、WLAN、CAN/CAN FD、およびBroadR-Reachの拡張機能を持つ独自のEmbedded PCオプションを搭載する予定です。Embedded PCはLinuxにもWindows®オペレーティングシステムにも対応するため、ControlDeskやRTMapsの実行を含む多様なタスクのためのMicroAutoBox IIIの理想的な拡張機能となっています。さらに、MicroAutoBox IIIは新しいAUTERAハードウェアと組み合わせることも可能であり、これは自動運転分野のデータロギングやプロトタイピングアプリケーションに完璧なシステム構成となります。
今後の予定
dSPACEのMicroAutoBox IIIは、時代遅れにならず将来を通じて利用できる小型かつ堅牢な車載プロトタイピングシステムであり、継続的に拡張することが可能な製品です。また、新しいDS1521 I/Oボードの他にも、無線オプション、ウェブベースアクセスによるリアルタイムアプリケーションのダウンロード、IEEE802.1ASに準拠したEthernet時間同期のサポート、およびElectric Driveアプリケーション向けの新たなI/Oバージョンなど、さまざまな機能をシステムに追加することができます。
dSPACE MAGAZINE、2020年1月発行