発表日: 2016年09月12日 |
Jacob Perrin、アプリケーションエンジニア、dSPACE Inc.
アビオニクスソフトウェアのテストは、組込みシステム業界内のあらゆる領域において最も厳格な義務付けがあるものの1つです。電動化の要件や距離および快適性に関する新しい要件が増加するにつれ、航空機の複雑さは増大します。その結果、関連するコンポーネントをテストする際の複雑さは極めて増大します。
アビオニクスソフトウェアの妥当性を確認するさまざまな方法の中でも、HIL(Hardware-in-the-Loop)は信頼性、柔軟性、およびコスト効率に優れた標準的な開発環境として一般に認識されています。航空宇宙、自動車、および商用車などの業界では、組込みシステムをテストする場合にHILを使用することが一般的になりました。
dSPACEはゼロからシステムを構築することからスタートして、多くの業界に高性能のシミュレータを提供する企業リーダーになりました。SCALEXIOとして知られる、dSPACEが作成したこの最新のシステムは、この分野では依然として最も設定性、柔軟性、拡張性に優れたプラットフォームです。
SCALEXIOハードウェアプラットフォームは、強力なモデリング、試験、テストオートメーション、および管理ソフトウェアスイートによって拡張されています。また、このプラットフォームは、SimulinkおよびFMIのサポートに加えて、リアルタイム実行用のサードパーティ製モデルを統合するためのオープンインターフェースも提供しています。このプラットフォームには、サードパーティ製ソフトウェアおよびハードウェアを統合できる機能も搭載されています。そのようなSCALEXIOシステムへの統合に成功したサードパーティ製モデルの一例が、Presagis社のFlightSIMです。
HILシミュレーションに限定しては、高精度かつリアルタイムのプラントモデルを有することは必要不可欠です。この要件は、プラットフォームとシミュレーションモデルの間で共有されます。Presagis社は、SCALEXIOプラットフォームと組み合わせた際に航空宇宙産業の厳しい要件を満たすことができる強力なシステムにおいて、設計者が柔軟に航空機のコンポーネントをモデリングできるフライトシミュレータソフトウェアを作成しました。
SCALEXIO HILシミュレータには、幅広いテスト領域で使用できる極めて柔軟なチャンネルが用意されています。
dSPACE SCALEXIOシステムは、可能なかぎり設定を拡張できるように設計された汎用HILシミュレータです。グラフィカルなチャンネル設定、バーチャルECU機能、FMIのサポートなどの特徴を備えており、このリアルタイムプラットフォームであらゆるテスト領域がカバーされます。
その一部であるPresagis FlightSIMは、航空機システムのラピッドプロトタイピングを実行し、シミュレーションとHILの統合を通じて組込み開発をサポートするエンドツーエンドのソフトウェア開発ソリューションです。FlightSIMのオープンなモジュール型アーキテクチャでは、すぐに使用できるソフトウェアシステムシミュレーション、Mathworks社のMATLAB/Simulinkシステムシミュレーション、およびHILを自由に組み合わせることができます。これにより、ユーザはモデルの正確かつ厳密な条件をシミュレートできます。これらのテストは、開発の早期の段階で実施することができるため、市場投入期間の短縮が可能です。
グループ全体にHILチームが拡大し、タスクが分散されている中、コンポーネントおよびシステムの両レベルでテストを行える性能は、一層難でありながら重要になっています。それぞれの機械システムのモデルは、その領域ごとに固有の環境で開発する必要がありますが、組込みソフトウェアの妥当性確認および検証では、リアルタイムシミュレーションプラットフォーム上でモデル同士を組み合わせることが必要です。
また、開発者は、組込みコントローラをプラントモデルから切り離し、計算処理を分散し、条件を変更する機能が必要となる場合もあります。SCALEXIOプラットフォームは、FlightSIMなどのシミュレーション環境と組み合わせると、これらの要件を満たすことができるシステムとなります。
フライトハードウェアは、適切な通信プロトコルを使用してHILシミュレータに接続することができます。そのため、FlightSIMでは、関連するデフォルトのフライトシミュレータコンポーネントをカスタムコンポーネントに置き換え、これをテスト対象のフライトハードウェアに接続することができます。FlightSIMで飛行環境モデルパラメータを変更することは、曲線の変更と同様に容易であるため、ユーザは選択した固定翼機の性能を簡単にカスタマイズすることができます。コントローラとプラントは相互に分離可能であり、シミュレーションプラットフォーム全体で処理を分散することができます。
飛行計器ライブラリは、実際のフライトハードウェアの代わりに使用することができます。この場合には、CDNGを使用してハードウェアコントローラの入力を変更し、出力を監視および記録することができます。このハードウェアとのインターフェース接続は、ARINC 429、MIL-STD-1553などの必須の通信プロトコルを使用して行えます。
スティックのピッチ、ロール、およびヨーなどのパラメータはdSPACEコントローラからデータベースエディタ(DE)へと中継して送信され、DEは選択されたシミュレーションステップでのリアルタイム実行を保証する速度でFlightSIMシミュレーションモデルに影響を与えます。フライトシミュレータの出力は、Presagis VegaPrime 3D Simulation Softwareを使用して元のホストPC上でビジュアル表示されます。
この構成では、Presagis FlightSIMなどの強力な環境モデルと組み合わせた際に、SCALEXIOプラットフォームの小規模な機能サブセットを導入することができます。
このデモでは、ControlDeskを使用してパイロットの入力を制御します。ControlDeskには、ユーザが計器レイアウトをすばやく構築できるライブラリが用意されています。ステアリングコントローラはそのような計器の1つであり、このデモではジョイスティックとの接続に使用されます。
Presagis VegaPrimeは、このデモのシミュレーション環境をビジュアル表示するための総合的なビジュアル表示ツールキットです。
SCALEXIOプラットフォームは、一部の最も複雑なHILタスクを遂行するのに必要な機能を提供しています。オープンなSCALEXIOシミュレータを、Presagis FlightSIMなどのオープンかつさまざまな設定が可能な高精度のリアルタイムモデルと組み合わせると、組込みソフトウェアの検証および妥当性確認において無限の可能性がもたらされます。
この柔軟性により、サードパーティ製のソフトウェアやハードウェアは比較的容易に統合することができます。このプラットフォームの極めて大きな可能性に対する問いは、「これを使用して何をしたいのか」ということになるでしょう。SCALEXIOシミュレーションプラットフォームを使用することにより、多くのユーザ要件を満たし、プロジェクトを実現することができます。
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