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オフハイウェイ車両のHILテスト

発表日: 2014年11月13日

Amanjot Dhaliwal, Team Leader, dSPACE Inc.

作成者:
Amanjot Dhaliwal
チームリーダー、dSPACE Inc.

HIL(Hardware-in-the-Loop)テストシステムは、新しい建設車両や農業車両の組込みソフトウェアの開発やテストにおいて、ますます使用されています。これらのオフハイウェイ車両は、乗用車以上ではないにせよ、同程度に複雑です。なぜなら、車両に搭載して使用する組込みソフトウェアが増加しているためです。これにより、極めて要件の厳しい環境で動作するこれらの機械が安全性および信頼性に優れたパフォーマンスを発揮することができます。また、自動車に見られるパワートレイン、ビークルダイナミクス、車体エレクトロニクス用の組込み制御システムだけでなく、オフハイウェイ車両でも以下をサポートする必要があります。

  • 極めて精度の高い動作制御とセーフティクリティカルな運転が必要な機器
  • 過酷な条件下での耐久性と信頼できる操作性
  • GPSナビゲーションベースの運転支援および機器制御
  • 鉱業などの一部の事例に見られる自動運転や自動操作
  • HILプラットフォーム上でこれらの車両機能を徹底的にテストすることにより、フィールドテストやダイナモメータテストの際の故障を防止し、貴重な時間とコストを節約することができます。また、テストを自動化すれば、優れた再現性が提供され、テストの総コストも低下します。

エンジン

高度なトルク要件が求められるオフハイウェイ車両では、12気筒以上のディーゼルエンジンを備えていることは極めて一般的です。これらの大型エンジンでは、排ガスおよび燃費規制に対応するため、直接噴射やEGRなどの高精度の制御システムが含まれています。電子制御ユニット(ECU)と組込みソフトウェアによって拡張したこれらのテクノロジを用いて、HILテストシステムハードウェアを設計する場合(噴射ライン上の電流計測や噴射波形の取得など)には、さらなる検討が必要となります。dSPACEでは、このような厳しい要件を満たせるようにするため、DS5377ボードなどの特別なソリューションを開発しています。これらを使用すると、32チャンネルの電流計測や欠陥シミュレーションを実行することができます。

エンジンなどの物理的なシステムのモデルは、組込みソフトウェアテスト向けのHILシミュレーションテクノロジにおける重要な要素です。これらのモデルを計算するためには、センサ信号やアクチュエータ信号によって計測されるシステムの動的な状態や物理的な状態を認識する必要があります。たとえば、インジェクタによって出される電流計測値はその状態を示すものであるため、それに基づいて、特定のシリンダに噴射される燃油量を計算することができます。これはさらにエンジントルク全体の計算にも利用できます。ただし、モデルの計算の正確性を確保するためには、専用のハードウェアを使用して、そのような極めて複雑な信号を計測する必要があります。

dSPACE HILシステムには、インジェクタの電流波形を読み取り、噴射の開始角度と持続時間を推測するDS2211ボード上の複合コンパレータなど、専用の入出力コンポーネントが含まれています。エンジンモデルでは、この情報をトルク計算に使用することができます。

また、噴射波形のピーク、ブースト、およびホールドフェーズによって電流のレベルと持続時間を検証することも極めて重要です。噴射電流波形はオシロスコープでモニタリングすることによりプロファイルを確認できます。ただし、このプロセスは手作業であり、非常に時間がかかる可能性があります。HILでは、噴射電流波形をDS2004などの高速なADCボードに転送することができます。取得したこれらの波形は、モデル内で直接検証するか、または後処理して最適なプロファイルと比較することができます。
排ガス規制の厳格化に伴い、ディーゼルエンジン用の排ガス後処理システムには、よりアクティブな電子制御コンポーネントが組み込まれるようになりました。HILテストを活用すると、ダイナモメータの数を削減し、運転、保守に伴う時間とコストを節減することができます。また、組込みソフトウェアの自動検証に対応したラボ内であらゆるテストシナリオを再現できるようになります。そのため、テストの再現性や信頼性が極めて高くなります。

過去には、エンジンコントローラ自体で後処理制御のほとんどに対処できましたが、現在は大半のアプリケーションにおいて後処理システム専用のコントローラが必要です。排気システムのテスト向けのHILテストシステムでは、主に次のようなさまざまな後処理コンポーネントのシミュレーションが必要です。

  • 排気ガスレギュレータ(EGR)
  • ディーゼル用酸化触媒(DOC)
  • 選択接触還元触媒(SCR)
  • ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)
  • 補助ドージングシステム
  • VGT/VNTとターボチャージャのウェストゲート

dSPACE ASMライブラリの排気システムモデルを使用すると、後処理システムのモデルをすばやく作成しパラメータ化することができます。これらのモデルはリアルタイム動作向けに構築されたうえでテストされます。そのため、モデルをさらに変更してからHILプラットフォーム上でリアルタイムに実行する必要はありません。

機器類

機器類とは、掘削機のブーム、アーム、バケットなどのさまざまな機械コンポーネントです。従来、これらの機器の制御は、細やかな制御と高い作動力/トルクを提供できる油圧アクチュエータで行われてきました。ECUでは、比例バルブまたはオン/オフタイプのバルブを通るよう電流を制御することにより、油圧液の流れる方向をこれらのアクチュエータ経由で指示します。HILシミュレーションの場合、対応するバルブの状態を推測するための電流計測が必要です。この情報は、車両の油圧システムのモデリングに使用することができます。この点において、機器とトランスミッションの制御信号にはあまり差がありません。

システムの応答性と電気的欠陥の波及効果をテストして安全な動作を保証するには、油圧機器のクローズドループモデリングが必要です。流体力学のモデリングは複雑であるため、油圧システムのモデリングには特に困難な計算が伴います。通常、油圧システムのモデリングでは、複雑かつ高次の微分方程式が使用されます。これらは演算負荷が高く、難解であるだけでなく、リアルタイムシステムに必要な固定ステップソルバも使用します。SimHydraulics™やAmesim™などのツールでは、使いやすいビルディングブロックにより、油圧作動システムを直感的にモデリングすることができます。この手法をHILシミュレーションモデルで使用できることは非常に魅力的です。ただし、リアルタイムシミュレーションの実行時にはいくつかの課題もあります。システムは状態空間法でモデリングされるため、状態が変化するたびに状態空間パラメータを再計算する必要があり、モデル実行時間が急増します。その結果、リアルタイムシミュレーションのオーバーランを引き起こす可能性があります。

ビークルダイナミクス

オフハイウェイ車両のエンジンシミュレーションの方法は、自動車で使用されている方法とあまり変わりませんが、ビークルダイナミクスのモデリングの場合にはさまざまな課題が伴います。オフハイウェイ車両はほとんどの場合、土の上を走行するため、タイヤと土または走路と土の相互作用をモデリングする必要があります。大半の自動車ビークルダイナミクスモデルは、ある路面の固定摩擦係数のみを前提としていますが、タイヤと土のモデルは本質的に非線形であり、沈下量、接触パッチのばらつき、スリップの組み合わせなど、多くの要素を考慮する必要があります。

さらに、オフハイウェイ車両は、取り付けた機器の位置や車両が支える荷重量により、積載条件がより大きく変動します。組込み制御システムのパフォーマンスの妥当性を適用可能なすべての積載条件に基づいて確認できるよう、こうした変動はリアルタイムモデルでサポートすることが必要です。
これらの要素のモデリングは非常に困難です。さらには、これらの影響をビークルダイナミクスモデルに組み込むことにより、演算負荷が極めて高くなる可能性もあります。dSPACEでは、お客様との長年の協力から得た経験により、次の手法を1つ以上使用してこれらの課題に対処する技術を開発してきました。

  • モデル要素の簡素化
  • カスタマイズされたソルバの使用
  • 固定ステップサイズの最大化
  • 複数のモデル要素への分割により、異なるノードで計算を並列実行

GPSシミュレーション

オフハイウェイ車両では、自動車としての従来の意味でのナビゲーション向け、全地球測位システム(GPS)が使用されることはほとんどありません。GPSが使用される一般的な目的は、完全自動走行を実現したり車両のエンドエフェクタを正確に配置したりするためです。農業機械では、農業従事者がGPSを使用して種まき機の位置を制御し、最適な量の肥料や農薬を均一に散布することができます。建設機械では、エンジニアが道路の測量方法を正確に制御したり、誤って禁止区域に侵入するのを防いだりすることができます。
GPSはほとんどのオフハイウェイ車両の運転に極めて不可欠であるため、それらの組込みコントローラは機器の制御機能に適したGPS信号に大きく依存しています。GPS受信機はECUに外付けされており、シリアルまたはCANベースのプロトコルを使用してECUに位置情報を送信します。HILの視点から見ると、GPS受信機を切断してプロトコルをシミュレートするか、あるいはGPS受信機に定義された任意の経路および位置に対して実際の衛星信号をリアルタイムにシミュレートすることが可能です。

dSPACE GPSシミュレータソリューションを使用すると、Ethernet経由でSpectracom™ GSG-62ユニットと通信することができます。このインターフェースを使用することで、車両の位置や速度をGSG-62ユニットに送信し、GPS信号やGLONASS信号を生成することが可能です。GPS信号ジェネレータをリアルタイムビークルダイナミクスモデルと組み合わせれば、ECU向けの有効な位置信号を生成することができます。

まとめ

dSPACEは長年にわたり、オフハイウェイ車両のグローバルOEMメーカーやサプライヤと緊密に協力することにより、組込みソフトウェアの開発とテストの最適化を実現してきました。この難しい適用分野に取り組むための豊富な経験を積んでいる当社は、さまざまなテストシステムを提供しています。これにより、お客様は比較的低コストで極めて効率的に製品の品質と安全性を向上させることができます。

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