車載レーダーセンサのエコーの無線シミュレーション

発表日: 2019年09月11日

Andreas Himmler博士は、2019年4月16日、米国ミシガン州ノバイで開催されたdSPACE Tech Dayで、新しいdSPACE DARTS製品群に関するプレゼンテーションを行いました。

dSPACEでは、先進運転支援システム(ADAS)および高度な自動運転機能の開発にレーダーセンサのテストを使用しているお客様向けに、テスト環境を次のレベルへと引き上げるソリューションをご用意しています。車載用のセーフティクリティカルなレーダーシステムには、徹底的なテストが必要です。ぜひ、市場で最も新しく強力なパートナーシップを得られる機会をご活用ください。

レーダーセンサの適切な動作を確認するうえでは、チップ設計からEOLテストに至るまで、すべての開発段階でレーダーデバイスをテストすることが重要です。

当社では、お客様のレーダーデバイスのテストをサポートするため、ドイツを拠点とするmiro-sys社および米国カリフォルニア州を拠点とするInnovative Technical Systems Inc.(ITS社)とのパートナーシップを結んでいます。miro-sys社とITS社は、ともに30年以上にわたってレーダーテクノロジソリューションを提供してきており、両社の製品は、商業、自動車、航空宇宙、および研究開発分野のプログラムで幅広く利用され、業界標準に準じる地位を確立してきました。今日、両社はこのような専門分野で世界的なマーケットリーダーとみなされています。

Michael Rozmann氏、miro•sys最高経営責任者兼オーナー

dSPACEは現在、miro-sys社およびITS社と協力して、レーダーセンサテスト用のターンキーシステムを提供しています。複数のレーダーテストシステムパッケージは、dSPACE Automotive Radar Test Systems(DARTS)としてブランド化されており、現在dSPACEからのみご購入いただけます。

「dSPACEは、お客様を成功に導くよう全力でお手伝いいたします。お客様が新しい機能をよりすばやく市場投入できるようにするため、当社のポートフォリオにレーダーテクノロジソリューションが追加されました。当社は、パートナーと緊密に協力しながら、継続的にこのテクノロジを開発します。当社の足跡において、これは今後の大きなマイルストーンとなり、これまでで最も興味深いものになるでしょう。」

Andreas Himmler、Hardware-in-the-Loopテストシステム担当シニアプロダクトマネージャ

レーダーエコーをシミュレートする方法

図1 - 無線構成でのレーダーエコーシミュレーションの原理

レーダーセンサは、レーダー信号を発信することにより、オブジェクト、速度、およびオブジェクトとの距離を検出します。その後、周囲のオブジェクトによって発生する何千もの反射信号を取得します。DARTSを使用すると、これらのオブジェクトについて、速度、距離、サイズなどの関連するオブジェクト情報も含めてシミュレートすることができます。シミュレーションに際しては、DARTSをレーダーセンサの前に配置します。

ここでは、反射信号の遅延によりオブジェクトとレーダーセンサ間の距離がシミュレートされます。また、速度は周波数の変化により、サイズは信号の減衰によってシミュレートされます(図1)。

「すべてのDARTSはレーダー信号を受信し、速度、距離、サイズなどのオブジェクト情報を信号に追加したうえで、再び信号を発信します。レーダーセンサは、単一オブジェクトの情報を含むよう加工された信号を受信します。」

Andreas Himmler、Hardware-in-the-Loopテストシステム担当シニアプロダクトマネージャ

データ処理の柔軟性が向上

DARTSテクノロジは、デジタル方式とアナログ方式の2つの原理に基づいて動作します。いずれかの方式を選択できます。

デジタル方式

図2:デジタル方式

デジタル方式では、A/Dコンバータ(ADC)を使用してアナログのレーダー信号をサンプリングします。その後、極めて柔軟性の高いFPGAによってデジタル方式で信号を遅延させます。遅延信号はデジタルアナログコンバータ(DAC)に送信され、そこでRF信号に変換され、再送信されます。

デジタル方式の利点とは何でしょうか。

デジタル方式の利点は、データ処理時の柔軟性が高く、かつ最大遅延が大きくなることです。これにより、遠くにあるオブジェクトをシミュレートすることができます。DARTSでは、1センチ単位の極めて高い精度で指定された距離を保つことができます。たとえば、10.06メートルの距離でターゲットまたはエコーをシミュレートすると、シミュレートされる距離は正確に10メートル6センチになります。

アナログ方式

図3:アナログ方式

また、アナログ方式を使用することもできます。その場合は、ルーティングを物理的な遅延線を介して行うことで、信号を遅延させます。シミュレートするオブジェクトの距離は、選択された遅延線の合計数により決定されます。アナログ方式の利点は、実現可能な周波数帯域幅が広いことと、極めて短い距離のオブジェクトをシミュレートできるということです。

DARTSがこれほどまでに最先端の製品である理由は何でしょうか。

dSPACEのレーダーテストソリューションは、汎用性の高い重要な特長を備えており、開発するシステムの品質と信頼性を最終的に決定付けます。

精度:GHz帯で動作し、セーフティクリティカルなアプリケーションにも使用される高周波システムでは、機能の信頼性、精度、および安定性が特に重要です。これは、DARTSが提供する高品質のコンポーネントと高度なRF回路テクノロジによって実現しています。

連続的な有効距離:DARTS製品ファミリは専用設計のため最小距離(0.6 m)から、長距離(最大1,000 m)までのエコーのシミュレーションが可能です。

柔軟性:DARTSは、世界最小のRFフロントエンドを備えたレーダーテストシステムであり、動的な角度シミュレーションに最適です。小型で軽量のRFフロントエンドは、テストセットアップの面でほぼ無限の可能性を提供します。

「DARTSテクノロジを使用すると、0.6メートルという極めて短距離のターゲットでもシミュレートすることができます。これにより、歩行者が道路に立ち入った場合などを検証することも可能になります。極めて高精度のシミュレーションを提供するDARTSのテクノロジは、当社が競合他社との差別化を図るうえで重要な製品です。」

Michael Rozmann氏、miro•sys最高経営責任者兼オーナー

悪天候の条件でも、DARTSならセンサのテストが可能です。

DARTSでは、デジタルおよびアナログのどちらの動作方式でも、テスト時のシミュレーションモデルに雪、雨、霧といった環境の影響を組み込むことができます。また、干渉信号やノイズをシミュレータに追加して、複数の反射およびミラー効果を作り出すことができます。

「レーダーシステムを最大限駆使することで、影響を容易に計測することができます。」

Michael Rozmann氏、miro•sys最高経営責任者兼オーナー

ADAS/自動運転向けレーダーセンサの課題に対応

図4 - DARTSを使用すると、センサの機能をすばやく簡単に決定できます。

優れた信頼性と柔軟性を持つ当社の統合型アプローチを活用すれば、お客様の今後のあらゆる課題に対応することができます。

ADASおよび自動運転のアプリケーションソフトウェアを開発する場合、定められた条件下でレーダーセンサ、制御ユニット、および信号処理ソフトウェアをテストし、極端な使用事例も含めて対応できる高度な性能や機能を実現する必要があります。

センサが実際の環境でどのように機能するのかについて、疑問を感じたことはありますか。

DARTSテクノロジを使用すると、現実の世界と同様に、ラボでセンサをスティミュレートすることができます。つまり、アンテナの特性、感度、分解能、分離性、線形性などのセンサプロパティを考慮しながら、さまざまな速度、距離、および角度でオブジェクトをシミュレートできます。

さまざまな交通状況を分析する場合、シナリオベースのテストで何千ものシミュレーションを実行する必要があります。DARTSでは、センサコントローラのクイックテストを特定の複雑なシナリオで実施したり、さまざまなパラメータを通じて事前にプログラムされたテストを自動的に実行したりすることが可能です。また、DARTSの高いRF性能により、(速度、距離、サイズといった)オブジェクト間の相関関係を適した状態に保持することもできます。DARTSをHIL(Hardware-in-the-Loop)システムと組み合わせれば、総合的なシナリオベースのテストを実行し、エコーをシミュレートすることで、より形式化しかつ詳細な評価を行うことが可能です。

当社では、お客様に可能な限り効率的かつ正確に作業していただきたいと考えています。そのため、DARTSはレーダーセンサの無線シミュレーションに対応したdSPACEレーダーテストベンチと組み合わせて使用できるようになっています。これにより、レーダーセンサの現実的かつ再現可能なテストをラボで実行できるようになります。テストベンチには実際のオブジェクトを最大5つ統合することができ、距離、速度、RCS、および方位角といった操作パラメータを使用することが可能です。

DARTSを活用できる場面

DARTSは、チップメーカーやレーダーメーカーから、OEMメーカーやアフターマーケットでの使用に至るまで、さまざまなレーダーテスト環境で使用することができます。適用分野には以下が含まれます。

  • レーダーテストベンチ – より方位角が広いオブジェクトのシミュレーションにおけるレーダーセンサのテスト
  • チップテスト – レーダー制御ユニットのICのテスト
  • ECUテスト – レーダーセンサの電子制御ユニット(ECU)のテスト
  • EOLテスト – 車両に取り付けられたレーダー制御ユニットのテスト
  • アフターマーケットテスト – 後付けデバイスのレーダー制御ユニットのテスト
  • 認証 – 標準化された車両テストおよびレーダーセンサテストの法的適合性の検証

レーダーセンサシミュレーションの持つ可能性

図5 - dSPACE DARTSレーダーターゲットシミュレータファミリ。

DARTSはどのような点でお客様の開発プロセスをサポートできるでしょうか。レーダーセンサテストシステムでは、極めて高精度で信頼性の高いエコーを生成できるため、アダプティブクルーズコントロール(ACC)、自動緊急ブレーキ(AEB)、カットイン/カットアウト操作などのテスト機能に対応することができます。

また、DARTSは極めて高度なRF回路テクノロジと高精度のシミュレーションを備えているため、迅速かつ徹底的なテストが可能であり、セーフティクリティカルなアプリケーションで求められる要件にも対応することができます。

さらに、DARTSには信号の受信から送信までのタイムラグが極めて短いという特長があり、非常に短距離でのターゲットシミュレーションが可能です。0.6メートルから3,600メートルの幅広い距離範囲がサポートされており、範囲分解能は6 cm、ドップラー分解能は0.1 km/hとなっています。

また、DARTSは世界最小のRFフロントエンド(アップ/ダウンコンバータ)を使用しているため、動的な角度シミュレーションにも理想的です。

さらには、1 GHz(デジタル)と4 GHz(アナログ)の広い帯域幅により、必要なRF帯域をすべてカバーすることができます。このため、DARTSは安定した基準周波数(低ノイズ)を持つ信頼できる基盤として機能します。

また、すべてのDARTSには独自のデジタル信号処理機能が搭載されているため、変調方式の影響を受けることがありません。FMCW、コード化または非コード化チャープ、位相変調、またはパルス変調など、レーダーセンサの変調方式を問わず、すべての信号をパフォーマンスを低下させることなく処理することが可能です。

DARTSのセットアップに要する時間

DARTSのテストセットアップは極めて簡単です。

「システムのセットアップは非常に簡単です。当社では、7分以内という短い時間で、新しいプロトタイプレーダーを動作させ、シミュレーションを実施することができました。」

Michael Rozmann氏、miro•sys最高経営責任者兼オーナー

DARTSと他のdSPACEツールの併用

既にdSPACEツールをご使用であれば、さらなる機能向上が可能です。DARTSは、レーダーテスト用のスタンドアロンシステムとして利用するだけでなく、最先端の無線レーダーテストに対応したdSPACEレーダーテストベンチに統合することも可能です。

さらに、HILまたは無線テストベンチを使用すれば、DARTSをAutomationDesk、ControlDesk、ConfigurationDesk、ASMなどの他のdSPACEツールと組み合わせることもできます。

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