発表日: 2019年06月04日 |
自動運転のさまざまな要件に対応するためにdSPACEがどのような変貌を遂げてきたかについて、米国ミシガン州ノバイにて行われた直近のdSPACE Tech Dayにおいて、dSPACE GmbHのAdvanced Application and Technologies部門リードプロダクトマネージャであるAndré Rolfsmeierが考察を示しています。
André Rolfsmeier氏、リードプロダクトマネージャ、Advanced Applications and Technologies、dSPACE GmbH
運輸業界でのレベル3、4、5の自動システムの導入が近づく中、OEMメーカーは、実際の交通状況での車両の安全な運転を実現する運転機能の確立に向けた取り組みを加速しており、予測型の360度環境認識機能や冗長検知機能を開発しています。
予測型の360°冗長検知
自動運転をサポートするためのセンサテクノロジは急速に進化していますが、OEMメーカーは、こうした進歩に伴う新たな課題にも直面しています。オンデマンドソフトウェアの導入、Over-the-airでのソフトウェアアップデート、ビッグデータの処理、運用安全性の検証や認証などはその例です。
このようなアジャイル形式の極めて動的かつ新しい開発環境では、人工知能(AI)が重要な役割を果たします。たとえば、運転状況を予測し、車両の反応を決定する場合、車載AIに基づいてセンサデータを処理および分析します。
この画像には、自動運転の開発に関連する一般的な課題の一部が示されています。
これらの開発を通じて運輸業界は急速に変化を遂げており、dSPACEでもそれらの研究開発活動に最大限取り組んでいます。
dSPACE GmbHのAdvanced Applications and Technologies部門でリードプロダクトマネージャを務めるAndré Rolfsmeierは、「当社では、こうした新しい今後の要求に速やかに対応するため、戦略を変えつつあります」とし、「自動運転の実装を迅速に進め、最終的にお客様の生産性の向上を実現できるようにするため、当社のツールチェーンの調整と新しいソリューションの開発に取り組んでいます」と述べています。
dSPACE製品ポートフォリオの一部として現在利用できる先進運転支援システム(ADAS)および自動運転(AD)向けのコア技術は多岐にわたっており、MIL(Model-in-the-Loop)シミュレーション、運転機能のプロトタイピング、SIL(Software-in-the-Loop)シミュレーションからHIL(Hardware-in-the-Loop)シミュレーションやテスト管理に至るまで、さまざまな技術が提供されています。これらのコア技術には、ADASおよび自動運転アプリケーションの専用ソリューションが含まれます。
dSPACEの現在のADASおよび自動運転アプリケーションポートフォリオ
dSPACEでは、Intempora社と提携することにより、RTMapsソフトウェア開発環境をツールチェーンに統合し、特に要件の厳しいマルチセンサアプリケーションに対応できるようにしています。RTMapsでは、複数のセンサや車載バスからのデータに正確にタイムスタンプを設定し、記録、同期、および再生することができます。さらに、RTMapsはC/C++、PythonまたはSimulinkコードを使用して簡単に認識および融合アルゴリズムを実装できるグラフィカルな環境を提供します。
Rolfsmeierは、「世界初の無人量産車両(NAVYA ARMA)は、RTMapsを使用して開発されました」とし、「RTMapsにはセンサやデータ処理のための広範なライブラリが用意されています。そのため、カメラ、レーダー、LiDAR、GNSSなどのセンサをすばやく簡単に実装できます」と述べています。彼はまた、dSPACEはSILおよびHILテクノロジにも大いに投資していると述べ、
「SILは未来の夢ではありません」とし、「既に当社のお客様が大いに使用しています」とも語っています。
また、たとえばBMW社、VW社、Jaguar Land Rover社の開発エンジニアが開発の初期段階でSILや仮想化を用いてアルゴリズムを設計およびテストしていることや、MAN Truck&Bus社がADAS開発にCamera-in-the-LoopやRadar-in-the-Loopを使用していることにも彼は言及しています。
レベル3、4、5の自動システムの開発と新しいテスト手法の実装を行う企業は、モデルベースの開発フローだけでなく、データおよびシナリオ主導型のフローも取り入れる必要があるとRolfsmeierは述べており、
「スケーラブルなコンピュータプラットフォーム環境で何百万ものシナリオを仮想的にテストできることが必要です」とも述べています。
dSPACEでは、複数のPCとdSPACE VEOSプラットフォームを組み合わせて使用するクラスタシミュレーションソリューションを提供しており、何千もの異なる運転シナリオをサポートすることができます。各種のテストは、PCクラスタを通じてお客様のラボで行うことができます。また、近い将来にはクラウドでも実行できるようになります。計測データを取得および保存した後は、現実の環境に合わせたSILおよびHILセットアップを使用して、テストドライブを再現することも可能です。このセットアップでは、20個以上のセンサを同時に組み込み、センサと車載バスのデータを時間同期的に再現することが可能です。
Rolfsmeierは「当社のビジョンは、取得した計測データから現実の環境に極めて近いシミュレーションシナリオを生成することです」とし、「これらのシナリオが利用可能になれば、シナリオベースのテストという新しいテスト手法を確立できます。また、クラウド機能を使用することで、テストの機能と速度を向上させることができます」と述べています。
さらに、「dSPACEはクラウドシミュレーションの分野にも参入し、AIチームを立ち上げています」とし、「私たちは、極めて動的で迅速な手法の開発に一層取り組むことで、適切な期間内にこれらの使用事例に対応できるようにしたいと考えています」と述べています。
dSPACEの変貌を示すスナップショット
実車によるテストドライブを、考え得るすべてのシナリオで実施することは不可能です。そのため、妥当性確認を行ううえで、シミュレーションは必要不可欠です。dSPACEでは、センサのフロントエンドテストやデータの再現テスト、リリーステストや認証でのSIL/HILシミュレーションを活用するお客様をサポートしています。これらの分野では、ISO 26262機能安全規格、SOTIF(Safety Of the Intended Function)およびUN-ECEの規制への準拠が極めて重要です。dSPACEはこれまで、このようなテーマに関する貴重な経験を複数のプロジェクトを通じて重ねてきました。
クローズドループシミュレーションをサポートするには、適切なシミュレーションモデルが必要です。dSPACEでは、環境、トラフィック、車両、およびあらゆるタイプのセンサ(カメラ、レーダー、LiDARなど)に対応した現実的なシミュレーションモデルを提供しています。当社の目標は、レベルの異なるシミュレーションをすべてサポートするセンサモデルを提供し、それらを通じて認知、融合、計画、モーション制御といった各種アルゴリズムなど、特定の使用事例をテストできるようにすることです。dSPACEでは、特に認知アルゴリズムの妥当性確認に対応するため、レイトレーシングを使用した物理特性ベースのシミュレーションの精度を向上させる新しい方法に取り組んでいます。
Rolfsmeierは「これにより、レーダービームやLiDARビームの現実的な挙動をリアルタイムかつより高速にシミュレートできるようになります」とし、「SILまたはHIL環境で中央演算処理装置をテストするには、さまざまな環境センサからのデータを正確に同期させることが不可欠です。また、当社では極めてリアルなシミュレーション環境を活用したカメラセンサモデルの改良も進めています。(シミュレートされたシナリオでは)気象条件をワンクリックで変更することができます」と述べています。
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