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従来の自動車開発に混乱を生じさせている自動化テクノロジに対して、あなたは準備できていますか。

発表日: 2016年05月17日

Mahendra Muli、マーケティングおよび新規事業開発担当ディレクター、dSPACE Inc.

ADASおよび自動運転車両への大きな移行は、自動車業界の各関係者に影響を与えています。当社はこれまでパワートレイン、電動化、バッテリシステム、その他多数のテクノロジの課題に継続して取り組んできましたが、現在注目されているのはADASと自動運転車両です。

ADASは最先端の自動化システムです。一部のADASシステムはすでに量産されており、生産ラインは逼迫しています。これらのシステムの開発や実用化に取り組む企業はますます増加しており、それに連れ、私たちの社会は自動化へとさらに近づいています。では、自動車関連テクノロジの開発プロセスにおけるこれらのシステムの影響について、多くの側面から見てみましょう。

新たなモビリティ産業の登場

今春の初めに、私は米国ミシガン州のデトロイトで開催されたSAE World Congressに出席しました。プレゼンテーションの1つでは、講演者が聴衆に「この中で自動車業界の方はいらっしゃいますか」と尋ねていました。この時、ほぼ全員が手を挙げました。しかし、この講演者は、「皆さんの認識は間違っている」と指摘し、私たちが本当に属しいているのは「新たなモビリティ産業」であるとしました。その産業とはすなわち、航空機の電動化からハイパーループまでを含む別の新しいソリューションを含む産業です。このように、自動車業界の定義自体の見直しが始まっています。

この再定義されたモビリティ産業には、所有権ベースの個人輸送からサービスベースのモデルに至るまで、今後移行が進むと想定される無数のテクノロジやビジネスモデルが含まれています。その中でも、サービスベースのビジネスモデルにおける自動化テクノロジには、極めて高い潜在的価値があると評価されています。カリフォルニア州にある自動運転テクノロジのベンチャー企業であるCruise Automationは、GM社によって10億ドルで買収されました。他にも、同様の大きな利益が見込まれる企業は多くあります。

自動車業界で起きている変革のもう1つの例としては、Google社とFCA社との提携による自動運転ミニバン(Chrysler Pacifica Hybrid)の開発があります。これは、従来の自動車OEMメーカーと大手IT企業が結びついた一例です。

自動車業界の混乱は現実であり、それは今も起きています。このような混乱による新たな要件の発生により、自動車製品の開発とエンジニアリングには直接的な影響が出ています、それは同時に、自動化テクノロジのさらなる発展が期待されているということでもあります。

ロボット産業の復活

自動車業界に衝撃を与えているもう1つの要素は、ロボット産業です。90年代には産業用ロボットの技術革新が起き、多くの進歩がありましたが、ロボットが私たちの生活を管理するということは遠い夢のままでした。自動運転車両に人工知能(AI)が適用されている現在、ロボット産業は活気を取り戻しつつあります。Uber社では、自動運転車両の設計のためにカーネギーメロン大学のロボット工学チーム全体を雇用しました。これは、ロボット産業の重要性を明確に示している事実です。

ECUアーキテクチャの統合

技術レベルで生じているもう1つの変革的な要素は、電子制御ユニット(ECU)アーキテクチャの統合です。

特定の機能に対して個別のECU/サブシステムを開発する従来の方法では、どちらかといえば分散型のアーキテクチャを使用することが一般的です。ただし、ADAS機能の進化により、センサ、サブシステム、機能、および要件の数は増加しています。これらの機能には、車両環境全体の情報が必要ですが、そのためには、それらの提供元となる真のシングルソースが必要になります。そのような情報を生成する場合には、センサとデータの融合が必要です。

自動運転車両アプリケーション用の中央ドメインコントローラ

もう1つの混乱要素(ただし、プラスの影響を与えるもの)

従来の自動車開発プロセスに(プラスにではあるものの)影響を与える要素がもう1つあります。それは 仮想検証テクノロジです。

仮想検証を使用すると、ECUソフトウェアを早期の段階でテストできるだけでなく、重要なHILテスト環境を再利用できるようなるため、ECU開発プロセス全体に利点が提供されます。そのため、プラスの混乱要素と言えます。また、PCベースでシミュレーションを実行すれば、あらゆる種類のシナリオを使用してECUソフトウェアの妥当性確認、検証、およびテストを実行できるため、開発作業をさらに効率化することができます。自動運転テクノロジが人間の運転よりも優れていることを統計的に確認するために車両の総合的なテストを行う場合、このようなテクノロジは不可欠です。

dSPACE仮想検証プラットフォーム - VEOS

ADASや自動運転システムがテストに与える影響

RAND社では、自動運転が人間の運転よりも優れていることを統計的に証明するのに必要な運転時間はどれくらいかを推定する調査を行いました。そこでは、自動運転機能が20%向上したことを立証するには、100台の車両で24時間年中無休で運転した場合でも500年を要するという結果が出ました。つまり、研究開発をより迅速に行うためには、新しいテスト手法や仮想検証などのツールを定義することが大きな課題となっているということです。

車両ソフトウェアの統合やテストにおいて、HILテストを導入することは間違いなく最も重要なマイルストーンです。ただし、自動化機能やADAS機能では、コンポーネントモデルだけではなく、さまざまな運転シナリオ(車両、トラフィック内の周辺車両、道路状況、環境条件、インフラ情報のやり取りなどを含む通信)も利用されています。そのため、これらをシミュレートすることも重要です。

シミュレートする情報には、センサやバス通信だけではなく、ビデオ入力、マップデータ、V2X通信、歩行者、および工事区域や標識などの車両環境における静止アイテムも含まれます。このように、シミュレーション対象の大幅な追加によって、従来のHIL構成はますます拡張されていきます。また、新しいテスト手順や評価基準も必要となります。

GPSおよびV2X通信テスト用のHILシステム

dSPACEとINTEMPORA社の提携

自動化テクノロジの開発は、センサ(および情報の)融合や人工知能(または高度な意思決定アルゴリズム)など、さまざまな分野に分類することができます。これらのコンポーネントのいずれにも、大容量メモリ、計算(ナンバークランチング)能力、および極めて高速な計算が必要となります。そして、それには高度なマルチコアまたはGPUベースのプラットフォームが必要です。

ソフトウェアのアルゴリズムも、従来のCプログラミングではなく、C++やCUDAなどのさまざまなプログラミング言語でコーディングされています。特に新興のテクノロジ企業では、このようなプログラミングの多くは、グラフィカルなモデルベース設計の先進的機能を利用するのではなく、従来の人間によるプログラミング手法を用いて行われています。しかし、このような場合でも、私たちはグラフィカルな手法の利点を活用する必要があります。そのためには、グラフィカルな環境を提供しながら、より高いレベルの言語でコードを自動生成し、かつ新しいハードウェアプラットフォームで実行できるツールが必要です。

dSPACEでは、Intempora SAと新たに提携することにより、ADASや自動運転車両の開発に取り組んでいるお客様に生じるこうした技術的ギャップを埋める取り組みを行っています。当社では、Intempora社の主力製品であるRTMAPSを供給し、dSPACEのハードウェアおよびソフトウェアプラットフォームとの緊密な統合や連携を実現します。

ADASおよび自動化機能に対応した車載ソフトウェアをテストする場合に重要となる要件の1つは、すべてのセンサデータを時間同期して再生できるようにすることです。RTMapsを使用すると、通信と情報を容易に融合したうえで、それをdSPACE環境で利用できるようになります。

dSPACE ControlDeskには、さまざまなソースからのデータを同じ時間軸に相関させる機能が既に搭載されています。ControlDeskでは、データを一度記録すると、そのデータに3Dアニメーション、動画、GPS、およびその他のV2Xソリューションによって収集またはシミュレートされた情報データを含めたうえで、仮想シナリオで再生することができます。これは、ADASシステムの開発にとって極めて重要な優れた機能です。

ただし、センサデータの同期再生だけでなく、センサデータのシミュレーションや情報の提示、さらには再現性や反復性を実現したいというお客様のニーズもあります。潜在的なエラーやアドホックネットワークの接続性の問題などをシミュレートするには、固有の機能とともに、従来のソースとそれ以外のソースから得られる情報を一元的に提示する必要があります。dSPACE SCALEXIOシステムをAutomotive Simulation Models(ASM)、ControlDesk、およびその他のさまざまなソリューションと組み合わせて使用すると、こうした独自の機能を提供することが可能です。

新たなADASツールチェーンの発展

ADASと自動化テクノロジによってもたらされた自動車業界の大幅な変化について考えると、自ずと次の疑問が湧いてきます。私たちはこの変化の到来を見越していたのでしょうか。私の答えは、確実に「いいえ」です。しかし、従来からdSPACEでは、特にADAS向けのさまざまなテクノロジを極めて総合的なソリューションへと発展させる取り組みを行ってきました。

過去5年間の当社のツールチェーンの開発について考えてみましょう。2011年以降、dSPACEは既にソフトウェアの来たるべき成長を予想していました。当社は、MicroAutoBox用のEmbedded PC、仮想検証(VEOS)、およびとりわけSCALEXIOといったHILテスト用のまったく新しいプラットフォームを含む、多数のテクノロジを導入してきました。

2012年には、大量のテストおよびテストデータの管理に対応するため、SCALEXIO向けの新しいオプションやSYNECTという新たなツールを発表しました。2013年には、MotionDeskにEthernet通信ソリューション、新しいレンダリングエンジン、および多数の拡張機能を導入しました。2015年にはV2X通信機能を開発し、ControlDeskにはマップ、動画などを表示するための新たな計器を追加しました。

このように、dSPACEはツールチェーンを継続的に進化させ、お客様がさまざまな変化に対応できるようサポートしてきました。ここで最も重要な点は、要件の収集の大半はdSPACEが行い、プラットフォーム、プロセス、およびツールの標準化に取り組んでいるということです。ただし、お客様にさらなるニーズが発生する場合もあります。その場合には、当社のエンジニアリングチームがお客様へのサポートを提供することにより、該当の問題をお客様固有のソリューションで解決できるようにしています。そのような問題については、当社までお気軽にご相談ください。すぐに製品に移行できるソリューションが既に当社にある場合もありますし、ない場合でも、当社が開発してご用意いたします。

最後に私が結論として述べたいのは、私たちが姿勢を正して周囲の変化に注目し、適応しながら進化する時代がやって来たということです。

お客様のADASおよび自動運転車両プロジェクトで最良の結果が得られることを願うとともに、このブログで取り上げられたツールをお客様が使用することで開発プロセスが向上することを心から希望いたします。

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