Shaanxi Automobile Group社では、お客様に最高水準の安全を提供するため、車両にカメラ、レーダー、および自動緊急ブレーキシステムを搭載しています。同社が利用しているのは、dSPACEグループのIntempora社が提供するマルチセンサアプリケーションの開発および実行環境であるRTMaps。効率的なソフトウェア開発を実現しています。

ドライバーの想像以上に、支援システムは頻繫に稼働し、運転をサポートしています。

市街地であろうと田舎道であろうと、トラックドライバーは常に歩行者や自転車を警戒し、交通、信号機、道路標識に目を配る必要があります。しかしどんなに慎重なドライバーでも、重さ数トンにもなる商用車の大きな死角と長い制動距離は楽なものではありません。こうした際に交通事故を減らしドライバーやその他の道路利用者を守る上で重要な役割を果たすのが運転支援システムです。このシステムは衝突が迫っていることをドライバーに知らせ、ドライバーが反応できない場合は自動的に緊急ブレーキを発動させます。

信頼性の高いアルゴリズムで車両の安全を実現
Shaanxi Automobile Group社の製品ラインの多くのトラックプラットフォームには、自動緊急ブレーキシステムが搭載されています。

信頼性の高いアルゴリズムで車両の安全を実現

Shaanxi Automobile Groupの電気制御部門の責任者であるYiran Zhang氏は、「当社は、中国のインテリジェントな商用コネクテッドカー分野でさらに業界をリードする立場となることを目指し、自動緊急ブレーキシステム(AEBS)の開発を推進しています。当社の目標は、各種の対象を誤認識することなく高い確率で識別できる安全性と信頼性に優れたAEBSアルゴリズムを開発し、それを幅広い量産車両に導入することです」と述べています。そしてこのようなAEBSに必要となるのが、インテリジェントなカメラやミリ波レーダーを備えた制御ユニットの実装です。

マルチセンサデータの課題

同社の開発者はプロジェクト当初、ECUに実装されたアルゴリズムのテストにセンサから記録したCANメッセージを使用していましたが、テストデータが複雑化したり詳細な分析が必要なコーナーケースが増加したりしたため、この手法ではすぐに対応できなくなりました。そのため、開発者は強力なテストを行える環境の導入に必要な要件を整理しました。

  • 正確で時間相関のあるデータフュージョンを確実に実行する、すべてのセンサデータの同期再生
  • フュージョンと検出アルゴリズムの出力の素早い確認を可能にするテストシナリオと録画映像の同期ビジュアル表示
  • 大規模なデータプールから必要な関連テストデータを容易に抽出できること
  • 大量のデータの効率的な処理
複雑さへの対応
RTMapsなら、センサデータとアルゴリズムの挙動を詳細に確認することができます。

複雑さへの対応

Shaanxi Automobile Group社では、上記のすべての課題を満たしているだけでなく、先進的かつ複雑なソフトウェア機能の設計や妥当性確認にも適している、RTMapsというマルチセンサアプリケーション向け開発および実行環境を導入しました。認知アルゴリズムの開発者であるJunjie Bai氏は、「RTMapsを使用し始めたところ、当初の手法とは雲泥の差が出ました。RTMapsを利用すると、多岐にわたる複雑なセンサデータを制御し、弊社独自のアルゴリズムの開発と妥当性確認に同期させることができます」と述べています。同社の開発者はまず、計測走行時にRTMapsを使用して大量のセンサデータを同期的に記録しました。これには、ウェブカムのオリジナル動画、マイクの音声信号、インテリジェントカメラのターゲットリスト、およびCANメッセージ形式のミリ波レーダーが含まれます。開発者は次に、RTMapsのグラフィカルな開発環境にAEBSアルゴリズムを組み込み、記録されたデータと組み合わせて動作させました。

効率性の高いワークフローをRTMapsで実現

Junjie Bai氏は、「RTMapsでは、生データでもCANメッセージでも実際のセンサデータをすばやく再生し、どの時点からでも再生し始めることができます。これはフュージョンおよび認知アルゴリズムを開発する場合に特に有用です」と述べています。また開発チームも、RTMapsは使いやすくワークフローも効率的になると報告しています。たとえば、同社のアルゴリズムでは、CANバスで取得したオリジナルセンサメッセージとその他のセンサ信号が重要な変数となるのですが、RTMapsではAEBSアルゴリズムの入力信号を選択することができます。また、車両内の警報を音声信号で再現しながら、オリジナル動画に基づいてそれぞれの運転状況をビジュアル表示してチェックすることが可能です。Junjie Bai氏は、「このように、運転中に起きた状況のあらゆる側面が記録され、開発者はそれをいつでも詳察できるのです」と述べています。さらに、RTMapsにパラメータを追加すれば、アルゴリズムを適合および最適化することもできます。特定の状況やいわゆるコーナーケースでの挙動を確認するテストケースのような、特に重要なセンサデータを抽出し、その後に行うアルゴリズムの最適化の際の妥当性確認用データとして利用することも可能です。

自動緊急ブレーキシステム(AEBS)

前方の低速走行車両や静止車両との衝突が迫っていることをドライバーに知らせるブレーキ。また、必要な場合にはブレーキをかけて衝突を防止したり、接触速度を低下させたりします。

センサをすばやく評価

センサをすばやく評価

一般的に使用されているセンサタイプの一部では、アルゴリズムの開発を始める前に、各メーカーのセンサのパフォーマンスを比較しておく必要がありますが、RTMapsはセンサのターゲットリストの評価や視覚化が可能なため、センサを容易に比較し、最適なものをすばやく選択することができます。

複数のプログラミング手法をサポート
RTMapsダイアグラムは、RTMapsでの処理をグラフィカルにブロック線図形式で表示します。

複数のプログラミング手法をサポート

開発者は多くの場合、基本構造の構築にはC/C++、画像処理にはPython、アプリケーション層にはSimulink®など、複数のプログラミング環境を使用して複雑なアルゴリズムを作成します。RTMapsのオープンかつ柔軟なコード開発環境はこのような多面的なアプローチをサポートし、異なるプログラミング手法同士を効率的に連携させることができます。

開発効率の向上

開発効率の向上

Shaanxi Automobile Group社では、3人の開発者がRTMapsを使用しています。チームは約3週間かけてこのソフトウェアの主な機能を習得しました。これにより、RTMapsは認知およびフュージョンアルゴリズムの開発および妥当性確認における中核的なツールとなりました。Yiran Zhang氏は、「RTMapsはAEBS開発を的を絞ってすばやく行うための必須ツールです。実データを使用してオフラインでアルゴリズムの妥当性を確認できるため、すぐに問題が特定され、解決策を導くことができます。これにより、開発期間が短縮し、工数やコストも削減されます。当社では、RTMapsの使用によりアルゴリズム開発の効率が50%以上向上しており、この結果、短期間での市場投入が可能になっています」と述べています。

安全性の高い車両という差別化を実現

Shaanxi Automobile Group社では、RTMapsで開発および妥当性を確認したアルゴリズムをShacman X6000およびX5000車両プラットフォームに実装する予定です。さらに、アダプティブクルーズコントロールおよびアダプティブスピードコントロール向けのアルゴリズム開発にもRTMapsを使用します。以上のように、同社はお客様のご要望にお応えする付加価値を生み出すことで、業界をリードすることを目指しています。同社の開発チームは、信頼性の高い自動運転機能の実装により、差別化を実現できると確信しています。

Shaanxi Automobile Group社のご厚意により寄稿

dSPACE MAGAZINE、2021年11月発行

Shaanxi Automobile Group社

約13,000人の従業員を擁する中華人民共和国で最大の企業の1つであり、トラックを製造しています。本社は陝西省の西安にあります。

その他の情報

  • RTMaps
    RTMaps

    マルチセンサアプリケーションでセンサフュージョンアルゴリズムや認知アルゴリズムの開発、テスト、ベンチマーク評価、および妥当性確認を行うためのソフトウェア環境

最新の技術開発動向をつかんで、イノベーションを加速。

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