韓国のJIAT(Jeonbuk Institute of Automotive Convergence Technology)は、dSPACEのADAS/ADツールチェーンを活用して、商用車向けの自動運転技術の発展に資するレベル3の自動運転テストを実行する車両プラットフォームを開発しました。ここでdSPACEが提供したのが、HIL(Hardware-in-the-Loop)シミュレーションとVIL(Vehicle-in-the-Loop)シミュレーションの強みを融合させたOver-The-Air(OTA)VILテスト環境です。これにより、車載センサおよびADAS/ADコンポーネントの各メーカーは、現実世界ときわめて同質のテスト環境を準備できるようになります。

現実世界のデータに準拠したテストプラットフォーム

自動運転の中核技術の1つである認知テクノロジは、車両の位置、方向、および速度を各種のセンサやGPS/GNSS経由で特定する「車両認識テクノロジ」と、環境内の車両、歩行者、信号機、横断歩道、障害物などのオブジェクトを認識および解析する「環境認識テクノロジ」に大別することができます。

JIATがdSPACEと共に構築したOTA-VILテストプラットフォームでは、テスト対象車両の位置、方向、および速度などの自動運転情報は実際の運転データに準拠しつつ、周辺オブジェクトや道路環境などの環境情報はASMセンサモデルやAURELIONを用いて、カメラやdSPACEのRadar Test Bench – Essential 2Dと関連付けて使用する方法を採用しています。

テストプラットフォームの構成

実際の道路条件とほぼ同等

dSPACEは、自動運転向けの検出テクノロジを検証するとともに、現実世界に近い環境で各コンポーネントの安全性を保証するための開発環境を構築しました。その仮想環境には実際の道路条件とほぼ同等のものが実装されてあり、さまざまなセンサ(カメラ、レーダー、LiDAR)やADAS/AD制御ユニットを実際の路上でテストするためのシミュレーション環境が整備されました。

レベル3の自動運転向けのテスト車両は、ADAS/AD制御ユニットや、カメラおよびレーダーなどのセンサといった多様な車両コンポーネントをテストできるように設計されています。また、各コンポーネントはテスト目的に応じて交換できるようデザインされているので、動的な環境や外部のテストコース環境でもVILテストが実施可能ということです。

AURELIONが柔軟なテストを提供

テスト車両では、センサの数やそれらの設置場所に応じてADAS/AD機能を評価することができます。AURELIONシミュレーションソフトウェアにおいては、必要に応じてセンサの設置場所や角度を調整して最適な位置を見つけることが可能です。

これにより、次のことが可能になります。

  • センサの仕様や設置場所の変更ごとに、センサおよびADAS/AD制御ユニットの機能を評価
  • 車載条件の変化に応じて、現実的なテスト結果をリアルタイムに確認

カメラ/レーダーテストベンチはトラックのキャビンに設置されており、実際のレーダーやカメラに代わってテストを行います。dSPACEハードウェアとレーダー/カメラは、運転席の車載PC(センサコントローラ + ADASコントローラ)に接続されています。

道路のデジタルツインを作成して、使用事例に応じて自動運転の機能をテストしました。実際の道路に相似した仮想環境で、道路標識、車線、道路構造物などを作成しました。天候条件や時間帯に応じたさまざまな条件をテストするために採用されたのがAURELIONでした。

実際の路上でシミュレートした交通状況を取り込みながらVILテストを行う様子。

現実世界のデータをシミュレーションデータと融合

実際の車両データとシミュレーションデータを組み合わせることにより、現実世界では実施しにくいシナリオをテストすることができました。

  • 車両位置、車輪速、ステアリング/ブレーキデータなど、実際の車両データを使用
  • オブジェクト(他の車両、歩行者など)や道路インフラストラクチャ(信号機、横断歩道など)のシミュレーションデータ
  • 夜間、逆光、降雨、降雪、霧など、悪天候条件におけるセンサの検出精度を検証
  • 実際の動作結果に関するデータを記録

テストにも合格

これは、VILテスト環境において、実際のセンサ用にシミュレーション環境を整備するという、韓国で初めて行われるプロジェクトです。実車を使用した複雑なテスト環境でセンサおよびECUの機能を検証することにより、フュージョンコンポーネントのソフトウェアおよびハードウェアに存在した不良を未然に検出するに至りました。

JIATはRadar Test Bench – Compact 3Dも購入しています。これは工場にあるテストベンチに隣接して設置されています。Compact-3DをVILテストベンチ上に配置する時には、これに含まれるセンサはトラックに接続されます。この場合トラックは実際の路上ではなくシャダイナモ上を走行するので、実路から得られたGNSSデータがこのシミュレーションでは重要になります。

JIATについて

JIAT(Jeonbuk Institute of Automotive Convergence Technology)は、自動車用の部品およびシステムの開発とテストをサポートする研究機関です。同機関では、国内の自動車関連企業や周辺産業が世界にまたがる企業・サプライヤへと成長することを支援すべく、広範囲にわたる研究開発のみならず、最先端の機器・教育・トレーニングを用いた技術サービスや、その他の業務支援プロジェクトなどを通じて、総合的ソリューションを提供しています。

JIATのご厚意により寄稿

dSPACE MAGAZINE、2024年7月発行

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