Great Wall Motors(GWM)社では10年以上にわたり、開発目標の1つとして新しいドライブテクノロジに注力しており、電気自動車やハイブリッドカーの開発施設やテスト施設を構築しています。同社は現在、プラグインハイブリッドカーのWey P8や電気自動車のOra R1といった革新的な量産車ブランドを含む広範な製品ポートフォリオを有しており、その開発においては量産コード生成ツールであるdSPACE TargetLinkや関連するTargetLinkエコシステムツールを使用しています。

電気自動車やハイブリッドカー、さらにはこれらの充電インフラには、多数のセーフティクリティカルな機能が備えられていますが、それらの開発は安全要件に準拠して行う必要があり、量産前には確実に妥当性確認を行わなければなりません。セーフティクリティカルな機能には、過充電や過熱を防止するバッテリ管理機能、トルク制御機能、制動および回生機能、電動ステアリングシステムの安全機能、電圧制御を伴う充電ステーション管理機能などが含まれます。GWM社では、関連するECUソフトウェア機能を開発し、生成した量産コードの妥当性を確認するため、多数の専用ツールを組み合わせた高度なツール環境を使用しています。

協調型のツール環境

同社では、Electric Driveやハイブリッドドライブのソフトウェアのほとんどを一元的に開発したうえで、それらをGWMブランドの各車に実装しています。また、同社は作業の多くを通常1チーム最大20名ほどのメンバーが分散して行っています。複雑な要件の管理にはIBM ® Rational ® DOORS ® を使用しており、新エネルギー部門では2015年以降、量産コード生成ツールであるdSPACE TargetLinkも使用して10以上のプロジェクトを展開しています。このツールは、分散型のチーム環境にも十分に対応しています。さらに同社は機能安全の専門チームを設けており、そこでは一般的な規格や標準、GWM社固有のガイドラインを含むすべての安全関連要件への準拠を確認しています。同社は現在、Simulink ® /Stateflow ® ベースの機能をTargetLinkで直接モデリングしています。TargetLinkはAUTOSARや各種シミュレーション機能(MIL、SIL)、TargetLink Data Dictionaryで集中的に使用されています。また、AUTOSARアーキテクチャのモデリングと統合にはdSPACE SystemDeskアーキテクチャツールを、TargetLinkでの効率的なAUTOSARラウンドトリップの実行にはSystemDeskを採用しています。さらに、シミュレーションソフトウェアであるdSPACE VEOSを用いて、SystemDeskで生成したバーチャルECU(V-ECU)のテストをHILテストより早期の段階で実行しています。なお、GWM社固有のモデリングガイドラインへの準拠を確認する場合にはMES Model Examiner ® を、Simulink ® やTargetLinkモデルを要件ベースでテストする場合にはテスト管理ツールであるMES MTestを使用しています。ソフトウェアをECUに実装した後は、dSPACE HILシミュレータでのHIL(Hardware-in-the-Loop)シミュレーションを通じて妥当性確認を行っています。

量産コードの最適化

2015年3月に、GWM社は主な量産コード生成ツールを評価し、それらのベンチマークを検討した結果、特に強力で自社の要件に最適であるdSPACE TargetLinkを導入しました。それ以降、TargetLinkは同社の開発プロセスの不可欠な要素となっています。また、導入初期にはdSPACE担当者による迅速なサポートを受けられたため、関連プロセスをすばやくセットアップすることができ、新しいツールを使用した業務をごく短期間で軌道に乗せられました。同社は現在、ECUアプリケーションソフトウェアのほぼすべてのコンポーネントにTargetLinkを使用しています。TargetLinkは高い品質、効率性、および優れた可読性を備えたコードを生成できるだけでなく、連続操作における安定性や他のツールとの相互運用性にも優れているため、同社は導入当初から非常に満足しています。また、TargetLink Data Dictionaryが同社のあらゆるプロジェクトにおいて極めて実用的であることも分かりました。たとえば、インターフェース、計測、および適合の各変数の管理やA2L形式の変数記述ファイルの生成にもTargetLink Data Dictionaryを活用しています。TargetLinkのAPIでは、A2L生成時にライブラリ関数を処理したり情報を追加したりするなどのプロセスを加えた独自のスクリプトを使用することが可能です。

Using dSPACE TargetLink, tools from the TargetLink Ecosystem, and other tools, GWM is developing and validating software for electric
and hybrid vehicles.

検証済みのソフトウェアをさまざまな車両シリーズに展開

GWM社が量産車向けに上記のツール環境でソフトウェアの開発と妥当性確認を行った例としては、四輪駆動プラグインハイブリッド車であるWey P8シリーズと、2018年末に発売された都市交通特化型の電気自動車であるOra R1があります。Wey P8は、燃費向上と排気ガス削減が可能なハイブリッドドライブを搭載しており、四輪駆動と内燃駆動/Electric Driveのオルタナティブドライブの組み合わせにより、ドライバーが運転する楽しみを得られる車両となっています。Oraモデルはすべての車両に同一のインテリジェントな新エネルギープラットフォーム(ハードウェア/ソフトウェア)を採用しており、ここから多数のモデルバリアントを展開できるようにしています。これは、中国製で初めての電気自動車専用プラットフォームです。

Runs on electricity: Ora R1.

今後の展望

今後の展望

GWM社では、TargetLinkと上記のツール環境を引き続き使用して、将来的に社内でさらに多くのソフトウェアを開発する計画を立てています。今後は、このような形でさまざまなAUTOSAR機能やセーフティクリティカルな機能を開発することの意義はますます大きくなっていきます。この点について、TargetLinkはAUTOSAR規格を直接的にネイティブサポートしており、ISO 26262、ISO 25119、およびIEC 61508に準拠したソフトウェア開発の認証にも対応しているなど、各種の必須条件を満たしています。

著者について:

Xuechen Zang

Xuechen Zang

Xuechen Zang is a software development engineer at Great Wall Motors, China.

Hangdi Yao

Hangdi Yao

Hangdi Yao is a software development engineer at Great Wall Motors, China.

dSPACE MAGAZINE、2020年11月発行

製品情報

  • TargetLink
    TargetLink

    Simulink®/Stateflow®から直接、ECU用量産コードを自動生成

  • SystemDesk
    SystemDesk

    システムアーキテクチャのモデリングとバーチャルECUの生成

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