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Do-It-Yourself Formula One

学生チームによるホッケンハイムリンクで開催される Formula Student 用レーシングカーの製作

発行元: dSPACE Magazine 1/2009, Mar 2009

毎年8 月になると、ドイツにある伝統的なフォーミュラワンのレーシングトラック「ホッケンハイムリンク」に、世界中の学生たちが独自に設計および製作したレーシングカーを持ち寄り、数日間のレースを戦います。このイベントはFormula Student と呼ばれていますが、単に最速の車両のチームが勝利を収めるわけではありません。学生たちは、生産設計、実装技術、マーケティング活動、その他の専門分野における優劣を競わなければなりません。

科学および技術の楽しさ

ドイツのパーダーボルン大学の学生である Florian Meier とUlrich Jahnke は、大学 での学業と平行して、すでに3 台目の競技 用レーシングカーの開発を行っています。 今から2 年前に、Formula Student へ の参加を決定したとき、このプロジェクト が、どのように自身のキャリアに影響を与 えることになるのか、まったく分かりませ んでした。Formula Student レースは、 自動車メーカーが学生たちに、年間数百 台規模の生産を行うアマチュアのレーシン グドライバー用車両の、プロトタイプの設 計製作を依頼するために考えられたもの です。この車両は、安価で、信頼性が高く、 簡単に走行させることができるものでなけ ればなりません。また、加速、制動、操縦 性において、パフォーマンスの優れたもの でなければなりません。この車両の市場 価値は、デザイン、快適性、量産車の部品 の使用によって高められます。 また、公式の車検に合格しないと、レー ストラック上での走行が許可されません。 最優秀車両の選定は、モータースポーツ および自動車業界(自動車メーカーおよ びサプライヤ)から選ばれた審査員によって決定されます。審査員は、各車両のデザ イン、費用計算書、販売計画を、他のチー ムのものと比較して審査します。パーダー ボルン大学のUPBracing チームは、現在 Formula Student 用の3 台目のモデル の開発を行っています。学生たちは、彼ら のレーシングカーのボディの基本フレーム を変更し、各部の最適化を行っています。 ドイツ技術者協会(VDI)は、関連企 業に、若きエンジニアたちの技術力を 示すために、2006 年からFormula Student Germany の開催を開始しま した。この競技のねらいは、モーター スポーツを通じて、学生たちに科学 および技術的な課題を解決するの楽 しさを教え、有能な人材をエンジニア リングの世界に引き付けることです。 dSPACE は、学部レベルの若い人々に、 科学および技術に関心を持ってもらうため に、UPBracing チームの後援を行ってい ます。

まるで小さな独立企業

Ulrich とFlorian およびその仲間たちは、 独自のマーケティングキャンペーンを計 画し、6 週間ごとに、予定されているイベ ントに関するニュースレターを発行してい ます。Ulrich のマーケティングチームは、 チームのすべてのメンバーがスケジュー ルを守れるように、インセンティブプログ ラムを考案しました。スケジュールどおり に、コンセプト、アイデア、活動を完成した 人には、ささやかなギフトが贈られます。 大きなプロジェクトの場合は、新しい UPBracing ジャケットが贈られることも あります。それぞれのチームは、まるで小 さな独立企業のように、その役割りを果 たさなければなりません。 また、このチームは、運動部の学生に、過 酷なレースに耐えられるように、ドライバー のための理想的なトレーニング法を考案 する仕事を割り当てています。

学際的な連携

このプロジェクトは、さまざまな分野の学 生たちに実際に役立つ機会を与えるとと もに、他の分野や科学的専門分野に対 する洞察力を高めることにも役立ちます。 UPBracing チームの事業面は、IT、会計 士、報道関係、マーケティングのグループ が担当しています。技術面は、シャシー、 エンジン、ドライブトレイン、ブレーキの各 グループが担当しています。学生たちのコ ミュニケーションは、UPBracing ウエブ サイトの内部フォーラムや、直接の電子 メールまたは電話などで行われています。 各グループは毎週定期的にミーティング を行っています。Florian とUlrich は、組 織を運営する方法を学ぶことができると 語っています。たとえば、何かのためにあ る場所に行く必要がある場合、交通費の 無駄を省くために、最も近くに住んでいる チームメンバーがその場所に行って仕事 をします。UPBracing チームには30 ~ 40 名の実働メンバーが存在し、そのう ち8 名は女子学生です。Florian は、新 しいメンバーの獲得が難しいと感じること があります。学生が卒業してチームから離 れるときに、Formula Student に関心を 持っている後輩に、このプロジェクトが無 償で非常に時間のかかるものであること を説明していますが、それにも関わらず、 Formula Student に対する学生たちの反 応は熱狂的です。 昨年度は、ドイツおよび各国から64 の学 生チームが、彼らの開発したレーシング カーをホッケンハイムリンクに持ち寄って、 Formula Student Germany 2008 の 8 部門での勝利を競いました。主催者は、 登録初日の最初の6 分間以内に、所定の 場所がすべて埋まってしまったと語ってい ます。ドイツの35 の大学と、アメリカ合衆 国、オーストラリア、カナダ、日本など、各 国の29 の大学のチームが参加しました。 Florian とUlrich は、設計や製作に喜び を見出すことと、進んで時間を投資する 必要があると述べています。また、将来の キャリアに役立つさまざまなことを学ぶこ とができるとも語っています。「モータース ポーツに実際に必要なものは、主として、 品質、柔軟性、スピード、イノベーションです。Formula Student は、次世代のエン ジニアたちに、学際的なスキル、チームによ る共同作業、複雑な問題を理解するための ノウハウを提供してくれます。これらは、大 学を卒業したばかりの若い社会人が満た していて欲しい、まさにその要件なのです」 と、HEGGEMANN autosport 社のCEO であるThomas Casey 氏は語っています。 学生たちには、すでに企業から採用に関 してさまざまなコンタクトがあり、大企業 のCEOとのやり取りにも自信を持つよう になっています。学生たちは、この活動が 評価されていることを知り、プロジェクトに 誇りを抱いています。UPBracing チームの 主要な後援者であるBenteler Group の Hubertus Benteler 氏も同様の見解を示 し、「企業の成功には、社員の献身、チーム スピリット、既成概念にとらわれずに物事 を考える能力が必須です」と語っています。 「Formula Student に参加した学生は、 アイデアや資金の調達から製品の製造に 至るまで、すべてを理解していることを証 明しています。私たちは、このような人材 には喜んで投資します。彼らは、物事を動 かしていく人間だからです」

国際的な70 以上のチームが相互援助

企業経営者とのネットワークに加え、学 生たちはチームで作業することにより社 会人として必要なスキルを磨いています。 Formula Student には、そのための Fairness Award(フェア奨励賞)が設け られています。競技の主催者は、国際的な 70 以上のチームが相互に援助し合うこと が非常に重要であると考えています。レー ストラック上で競争するチーム同士は、非 常に大きな連帯感を共有しています。 誰もが勝利を望み、自分たちの車両が最 速であることを希望していることは明らか ですが、それにも関わらず、できる限りの 相互援助を惜しみません。たとえば、バイ ロイト大学のチームが製作した車両のブ レーキペダルに故障が発生したことがあり ました。この故障が解決しないかぎり、ス タートラインには就けない事がありました。 このとき、パーダーボルン大学の UPBracing チームは部品の在庫を調べ、 ブレーキペダル用の部品を提供しました。 Delft/Holland チームは、装備品を満載 したトラックを伴って各レースに現れるた め、故障したチームを救援することができ、Team Supporter Award(チーム支援 賞)が与えられたことがあります。Ulrich とFlorian は、自分たちの製作したレーシ ングカーがFormula Student 2009 で 最速であることを証明し、パーダーボルン 大学がこのプロジェクトの後援を継続して くれることを希望しています。大きな組み 立て工場を立ち上げた国際的なチームも あります。UPBracing チームも、まもなく、 もっと広いスペースが確保できるでしょう。 現在の38 m² のガレージから適切な規 模のワークショップ施設への移転のための 話し合いが、パーダーボルン大学との間で すでに始まっています。

インタビュー

経営工学を専攻しているFlorian Meier(23 才) およびUlrich Jahnke(25 才)。パーダーボルン大学の UPBracing チームの主力メンバー二人にお話を伺いました。

2 年前にFormula Student プロジェ クトに参加した 動機は何でしたか?
Florian:大学で学んだばかりの理論を 実践できることでした。私たちのチー ムは実際の結果を生み出します。私た ちが独力でレーシングカーを製作し、実 際のF1 トラック上を走らせることがで きるなんて、いったい誰が想像できたで しょうか。

最も困難だったことは何でしたか?
Ulrich:最初の頃は、スポンサー探し が大変でした。このプロジェクトのこ とを知っている人が誰もいなかったの です。Formula Student 用のレーシン グカーを何とか製作できるようになり、 今年は、Benteler AG のCEO である Hubertus Benteler 氏が、わざわざシル バーストーンまでチームの応援に来て くださいました。

このプロジェクトから何を学びました か?
Florian:チームワークです。大学での ように個人の成績のために悪戦苦闘す るのではなく、共通の目的に向かって仕 事をし、プロジェクトのすべてのメン バーと実際にうまくやっていく必要が あります。
Ulrich:個人的には、専攻した科目の すべての講義から得たものよりも、この プロジェクトから多くのものを学びま した。自分でコンポーネントの開発に 従事してきた専門分野に関しては、その 科目の試験を受けるために後で特に勉 強する必要はありませんでした。

チームワークから、どのようなメリッ トが得られましたか?
Florian:以前よりもコミュニケーショ ンがうまくいくようになりました。1 日 に話す量が5,000 語から15,000 語く らいに増えたのではないかと思います。 携帯電話の契約内容も変更する必要が ありました。今は、1000 分無料の料金 プランにしています。(笑)

どのようにしてノウハウを得ました か?
Florian:まず基礎的な資料をたくさん 調べました。それから、コンピュータの 前に座り、頭脳を全開にして目的のコン ポーネントを設計し、画面上で形を与え ていきます。チーム全体で常に知識を 共有し、また新しいメンバーによっても 新しいアイデアが持ち込まれることも あります。

困難なこともあったのではありません か?
Ulrich:大学が私たちの仕事を認め て単位を与えてくれれば助かります。 そうなれば、このプロジェクトに多くの 時間をかけることによって、将来のため にキャリアを築くために多くのことを 学ぶことができます。

各企業との人脈は活用できましたか?
Florian:このプロジェクトはチームメ ンバーにとって良い宣伝になりました。 論文を作成するための実務研修の熱心な 勧誘を受けたチームメンバーもいます。 それに、今では自分に自信が持てるよう になりました。自分を売り込めること が大きいです。スポンサー企業の技術 グループの前で、いきなり講演を行うこ とになりました。(シャツをつかんで得 意の笑顔)

Formula Student での最高の瞬間はど んな時でしたか?
Florian:あるとき、シュトゥットガル トの有力チームがレースをリードして いました。彼らのレーシングカーが先 頭で周回を重ねていましたが、ゴールを 目前にして突然チェーンが切れて完全 に停止してしまいました。観衆は驚い て声を無くしました。そのとき誰かが 立ち上がって拍手を始め、観衆も皆、そ の拍手に加わりました。あのときは本 当に鳥肌が立ちました。