自動運転車両で特徴的なのは、周辺状況を認識するための膨大な数の高分解能センサです。これらのセンサは多数のデータストリームを作り出し、そしてそれを環境の全体像として融合しなくてはなりません。またこうした運転環境の全体像はその後、軌道計画など他のアルゴリズムでも利用できるようにする必要があります。一方、物体の認識やセンサの融合では、人工知能(AI)の支援がよく利用されます。さらに、複雑なAIベースのシステムを開発、トレーニング、およびテストするには、実車によるテストドライブで集めた大量(ペタバイト)かつ高品質なデータが必要です。

そのため、このようなデータドリブン開発プロセスにおいては、関連するすべてのデータを記録しておくことが、最も重要な役割を果たすことになります。増加の一途をたどる帯域幅への要件を満たすことも、格別のチャレンジになるでしょう。つまり記録システムは拡張性に優れているだけでなく、センサインターフェース、バス、ネットワークなどの幅広い車両設定に適合するよう柔軟に調整できることが求められているということです。

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これはdSPACE Magazine 01/2020号に掲載の記事です。オンライン版ですべての記事をお読みいただけます。

データロギング、プロセッシング、およびリプレイのための新たなシステム

dSPACEでは、これらの要件を満たすため、極めて強力な新しい製品ファミリであるAUTERAを発表しました。AUTERAは、車載でのデータの記録とプロトタイピングだけでなく、その後のラボでのデータ再生にも対応していますAUTERAAUTERAという名前はAUTonomous ERAを表しており、自動運転(AD)および先進運転支援システム(ADAS)の開発専用に設計された製品という意味を持ちます。

新たなAUTERA製品ファミリで最初に発表されたシステムは、堅牢な車載システムであるAUTERA AutoBoxです。AUTERA AutoBoxは、テストドライブ中に各種センサ、車載バス、およびネットワークからの大量のデータを記録および処理する場合に最適なシステムです。また、CAN FDに加え、Ethernet(1000BASE-T、10GBASE-T)や車載Ethernet(100/1000BASE-T1)、カメラセンサ向けのGMSL II、FPD Link III、CSI IIなど、さまざまな生データインターフェースをサポートしています。これらのインターフェースはすべて同期化されており、正確なタイムスタンプをデータの入力地点で直接記録するので、その後もそのデータを正しいタイミングで再生できるようになっています。

AUTERA AutoBoxは、その計算処理のパワーだけでなく、帯域幅も決定的な要素です。これが一度に記録できる高分解能なセンサの数を決定付けます。AUTERA AutoBoxでは、容易に交換およびホットスワップ可能なAUTERAソリッドステートディスク(SSD)を小型のシステムに内蔵しており、最大50 Gbit/sで連続ストリーミングを行えます。このような極めて広い帯域幅でも不十分な場合は、AUTERA AutoBoxをもう1台追加することにより簡単にシステムを拡張することができます。保存したデータは、ニューラルネットワークのトレーニング、シナリオ生成、認証などの際に再生できます。

すぐに使用可能なソリューション

AUTERA AutoBoxはLinuxオペレーティングシステムを搭載しており、必要なドライバーはすべて事前にインストールされているため、すぐに操作を開始できます。また、AUTERA上のマルチセンサ開発環境であるRTMapsを使用すれば、接続されたセンサからのデータストリームをシンプルなグラフ形式やビジュアル表示にして、複雑な連携を扱いやすくしてくれます。さらに、直感的なデータフュージョン機能や記録機能も搭載されています。しかしRTMapsはAUTERA AutoBoxのたくさんのオプションの1つに過ぎません。たとえば、Linuxオペレーティングシステムは、Robot Operating System(ROS)フレームワークなどの他のソフトウェアソリューションとも互換性があり、その上、将来オープンAPIが提供されれば、ユーザはシステムの全ての関連インターフェースやサービスを自身のソフトウェア環境で利用できるようになります。

柔軟に拡張可能なAUTERA

For sensor data preprocessing, AUTERA can be equipped with a powerful graphics card, such as the NVIDIA Quadro RTX 6000.

AUTERAの強みの1つが、多数の拡張オプションです。AUTERAのアーキテクチャは、幅広いタスクに対応するべくシステムを設定することが可能です。すなわち、高性能メモリでのデータ記録からグラフィックプロセッサ(GPU)などの専用のハードウェアアクセラレータを用いたAIアルゴリズムのプロトタイピング、さらには記録データの再生まで対応可能となります。AUTERAの拡張オプションには以下が含まれます。

  • 高性能ハードウェアアクセラレータ

グラフィックプロセッサユニット(GPU)またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)ベースの高速コンピューティングプラットフォームを用いてAUTERAを拡張すると、記録中のセンサデータを編集できるようになります。つまりこれは、データのプリプロセッシングやラベリングをロギングテストの実行中に行うことが可能ということです。そのため、このシステムは認知融合アルゴリズムおよびニューラルネットワークの開発や最適化、妥当性確認にも活用することができます。

  • 容易なメモリ拡張

AUTERAには、システムの動作中でも簡単にホットスワップ可能な専用の高性能AUTERA SSDが搭載されており、データはここに格納されます。各AUTERA AutoBoxでは最大2つのAUTERA SSDを並行して動作させられるので、帯域幅と保存領域を2倍にすることが可能です。それに加えて、複数のAUTERAシステムは同調して作動できるように、必要に応じてメモリサイズや帯域幅を拡張することもできます。

  • 最速でサーバにアップロード

dSPACEでは、専用のAUTERAアップロードステーションを提供する予定です。これにより、記録されたデータを可能な限りすばやく既存のサーバインフラやクラウドにロードすることができます。また、最大2つのAUTERA SSDを同時に読み込み、100 Gigabit Ethernetなどを介して直接データセンターにデータをストリーミング配信したり、AUTERA AutoBoxにLTE経由で直接アクセスして、テストドライブの記録中に直ちにデータを受信したりすることも可能です。将来的には、5Gでのアクセスも可能になります。

  • 容易なフリート管理

集中型のアクセスを使用せずにデータを記録するために、大規模車両フリートの設定を管理しアップデートすることは煩雑であり時間を消費してしまいがちです。そこでdSPACEは将来的に、車載AUTERA AutoBoxシステムを管理するためのウェブベースのソリューションを提供する予定です。このソリューションを使用すると、中央のワークステーションから現在のシステムの状態をモニタリングして故障を検出し、AUTERA AutoBoxの現在位置を特定できるようになります。また長期的には、システムの設定を一元的にアップデートし、フリート全体に展開できるようにする予定です。

製品クラス:マルチセンサアプリケーション対応のデータロガー、リプレイ、およびプロトタイピングシステム
主な機能

  • 車載に適した堅牢な筐体にLinuxサーバ性能を備えた、強力かつ拡張性の高いシステム
  • 環境センサおよび車載バスの同期処理とデータ記録
  • データのプリプロセッシングおよびデータフュージョンに対応したハードウェアアクセラレータにより、柔軟な拡張が可能
  • ホットスワップ可能なAUTERA SSDにより、テストドライブ記録中のメモリ交換が容易
  • 環境認識センサの生データ用インターフェース(GMSL II、FPD-Link III、CSI IIなど)をサポート
  • RTMaps(ブロックベースのアルゴリズム実装に対応した直感的かつグラフィカルなソフトウェア環境)に対応し、ユーザ固有のソフトウェア環境でオープンAPIを使用するためのオプションを備えたオープンなシステム

データロギング

  • リファレンスデータの収集
  • 車両とECUのテスト

プロトタイピング

  • センサフュージョン
  • 認知

データリプレイ

  • AIアルゴリズムの妥当性確認

  • ロギング帯域幅:最大50 Gbit/s
  • 記憶容量:最大32 TB
  • プロセッサ:Intel® Xeon® CPU、12コア
  • RAM:32 GB(ご要望に応じて最大512 GB)

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