バスおよびネットワークは、メカトロニクスシステムの開発プロセスに不可欠な要素です。たとえば、Ethernetがなければ、完全な自動運転車両の実現は不可能です。そのため、dSPACEでは、ネットワークをシミュレートおよび解析し、その妥当性を確認するための総合的かつ完全なツールチェーンを提供しています。
当社のソリューションの特長
- 車載向けおよびラボ向けのリアルタイムシミュレーションツールとハードウェア
- 完全にソフトウェアベースのバスシミュレーション
- また、航空宇宙産業や工業分野向けの要件もサポートしています。
- ご要望に応じて他のあらゆるアプリケーションやプロジェクトにユーザ固有のソリューションを提供
バスおよびネットワークのシミュレーション
dSPACEでは、バスおよびネットワークのシミュレーションタスク向けに、CAN、CAN FD、LIN、Ethernet、FlexRayといったすべての一般的な車載バスシステム向けの標準化されたソリューションを提供しています。この総合的なハードウェアおよびソフトウェアポートフォリオは、ラピッドコントロールプロトタイピングやHIL(Hardware-in-the-Loop)およびSIL(Software-in-the-Loop)シミュレーションなど、幅広い適用分野をサポートしています。
各種のシミュレーションプラットフォームはバスやネットワークシステムのテストに対応しており、広帯域幅の要件から車載時のサイズ制限に至るまで、個別のプロジェクトニーズに合わせて設計することができます。dSPACEでは、お客様が自身のネットワークをシミュレーションプラットフォームに接続できるようにするため、標準化されたソリューションだけでなく、複数のバスシステムを追加した航空宇宙産業および工業用アプリケーション向けの個別のソリューションも提供しています。ARINC 429、ARINC 664、MIL-STD-1553、Profibus、およびEtherCATなどの規格がサポートされています。
dSPACEでは、SOME/IP設定向けのdSPACE Ethernet Configuration Package、FlexRay通信向けのdSPACE FlexRay Configuration Package、CANおよびLIN通信向けのdSPACE Bus Managerなど、バスシミュレーションの設定に使用できる複数の製品を提供しています。Bus Managerは、完全にソフトウェアベースのネットワークシミュレーションだけでなく、ハードウェアベースのリアルタイムシミュレーションもサポートします。設定プロセスをスムーズかつ快適に行えるようにするため、このツールにはエンドトゥエンド保護、セキュアオンボード通信、グローバル時間同期などの重要な機能が統合されています。Bus Managerは、dSPACE ConfigurationDeskのアドオンです。こうした統合のおかげで、バスの構成と同じソフトウェア環境で、入出力チャンネルなどのリアルタイムハードウェアコンポーネントを設定することが可能です。
バスおよびネットワークのロギングとリプレイ
dSPACEでは、どのような要件が求められる場合でも、最適なシステムを提供します。
- AUTERAは、広いデータ帯域幅が必要な用途向けのソリューションです。この車載データロギングおよびプロトタイピングシステムでは、クラス最高の帯域幅により、LiDAR、レーダー、カメラセンサからのデータだけでなく、他の車載バスやネットワークから得られる生のネットワークデータも読み取って処理し、記録することができます。
- また、SCALEXIOが稼働していれば、ハードウェアを追加することなく、CAN、LIN、またはEthernetシステムのインターフェースに直接アクセスできます。このため、コストのかかる複雑なテストセットアップを行うことなく、容易に信号を分析できます。
- シミュレーションをソフトウェアベースで実行している場合は、dSPACE VEOSなどを使用してネットワークインターフェースに直接アクセスすることもできます。
- PCとECUを直接接続する場合は、CAN、LIN、K-Lineなどの各種バスプロトコル専用のコンバータを使用します。これらのコンバータ(DCI-KLine1、DCI-CAN/LIN1、DCI-CAN2)を使用すれば、リアルタイムシステムがない場合でも信号を分析できます。
- 車載用途の場合は、MicroAutoBox IIIをバスおよびネットワークゲートウェイとしてモニタリングを行うことができます。MicroAutoBox IIIは、車載機能プロトタイピングをすばやく実行するための強力なリアルタイムシステムです。このシステムは電子制御ユニット(ECU)と併用したり、またはECUに置き換えて使用することができ、実際の環境における制御機能の確認やテストが可能です。
すべてのシステムは、完全かつ一貫性のあるツールチェーンの一部として機能します。たとえば、多くのdSPACEプラットフォーム上では、バスシミュレーションコンテナを用いることにより、バス設定を環境モデルと組み合わせて再利用することができるため、バスインターフェースの調整が不要です。

通信記述ファイルでの作業
dSPACEでは、通信記述ファイルの解析などの特殊なタスク向けに、Communication Matrix Managerという専用のソリューションを提供しています。
Communication Matrix Managerは、直感的にすばやく、かつ低価格で通信マトリクスを処理するためのスタンドアロンソフトウェアです。通信規格については、Ethernet、FlexRay、CAN、およびLINをサポートしています。このソフトウェアは、コンテンツを従来の通信マトリクス形式(AUTOSAR、FIBEX、DBC、LDF)でグラフィカルに再現できます。表示は通信マトリクスから独立しており、さまざまなエレメントの階層ビュー、エレメントのプロパティ、フィルタ、および専用のビューが含まれています。また、クラスタ、チャンネル、ECU、PDUなど、複数の通信マトリクスから得られるさまざまな通信マトリクスエレメントのプロパティを容易に比較できるため、相違をすばやく直感的に検出できます。さらに、変更の検出や整合性チェックも容易に行えます。
ソフトウェア
ハードウェア
サポートしている通信規格
FIBEX
Fieldbus Exchange Format(FIBEX)はASAMで規定されています。ほとんどの場合、FlexRayネットワークはFIBEXファイルで記述されます。ファイルはXML形式で、車載ネットワーク全体についての情報が含まれます。ファイルには、ネットワークトポロジ、データフレーム、信号とそのコーディングやスケジューリング、および専用の信号パラメータが詳細に記述されています。
FlexRay
FlexRayは、タイムトリガ型車載通信システムの規格(ISO 17458)です。dSPACEのFlexRay製品群では、プロトタイパーやFlexRayインターフェースを装備した入出力ボードなどのハードウェアから、FlexRayネットワークのモデルをリアルタイムでシミュレーションするためのソフトウェアに至るまで、FlexRayの総合的なサポートが提供されます。
DBC
CANの通信データベースは、分散したECU間のCAN通信を記述するための1つのファイル形式です。ファイルには、信号を含むCANネットワークの属性、接続されるECU、およびCANメッセージが定義されています。この形式は幅広く利用されますが、CANネットワークに限定されます。
CAN in Automation
CAN in Automation(CiA)は、1992年に複数の企業によって設立されたユーザおよびメーカーの国際的な団体です。その目的は、CANプロトコルの今後の発展のための中立的なプラットフォームを提供し、CANの概念を普及することです。
LDF
LIN記述ファイル(LDF)では、LINバスのすべての信号、データパッケージ、およびスケジューリング表が指定されます。記述内容には、マスターコントローラと1つまたは複数のスレーブコントローラの属性が含まれます。名称からわかるように、このファイル形式はLINバスに限定されます。
ARXML
AUTOSAR XML(ARXML)ファイルは、AUTOSAR準拠のシステムを記述するものです。AUTOSAR(AUTomotive Open System ARchitecture)は、車載用のオープンで標準化された電気/電子(E/E)アーキテクチャの規格を開発および確立することを目的とする業界団体です。システムは、ハードウェアトポロジ、ソフトウェアアーキテクチャ、ネットワーク通信、およびこれらのエレメント間のマッピングに関する情報を組み合わせたものです。AUTOSARシステムデスクリプションファイルは、AUTOSARシステムテンプレートのインスタンスです。ファイル内では、バスプロトコル間のゲートウェイを含め、さまざまなバスプロトコルを記述することができます。
Ethernet
Ethernetテクノロジを利用することにより、単一のUTPケーブルを介して複数の車載システム(インフォテイメント、自動運転支援、オンボード診断など)から情報に同時にアクセスすることができます。