RTMapsは、1998年にCenter of Robotics of Mines ParisTech(CAOR)で最初に開発されました。当時、前取締役のClaude Laurgeau氏の指揮によりロボット工学や高度道路交通システム(ITS)に取り組んでいたチームが、EUからの資金援助で自動運転を研究する最初で最大のプロジェクトだったEurekaプロメテウス計画(1987~1995年)に参加しました。このプロジェクトの目的は、車両認知および高精度測位のためのコンピュータビジョンアルゴリズムとベイジアンネットワークベースのデータフュージョン環境を開発することでした。チームの目標は、プロトタイプ車両に前面カメラ、レーダー、そして初期のLiDARスキャナモデルを搭載し、これらのアルゴリズムをリアルタイムに実行することでした。
しかし、チームは、アルゴリズムの開発ではなくソフトウェアアーキテクチャに作業時間の90%を費やしていることにすぐに気付きました。
当時は要件を満たせる市販の開発ツールはなかったため、チームはモジュール型でコンポーネントベースの独自のソフトウェアソリューションを開発しました。このソフトウェアソリューションがRTMaps(リアルタイムマルチセンサアプリケーション)であり、開発されたのは20年以上も前のことでした。
RTMapsは、マルチスレッドアーキテクチャ設計によって最適化されているため、余分な作業を行うことなく、マルチコアおよびマルチCPUアーキテクチャを最大限に活用することができます。時間コヒーレンスはこのソフトウェアの重要な特長の1つです。RTMapsの開発者は、以前から車両の各種センサやデータソースを同期化する必要性を認識していました。そのようにすると、複数の処理チャンネルを並列に異なるレイテンシで実行することができます。RTMapsには、高精度なタイムスタンプメカニズムやデータストリーム再同期向けの機能などが内蔵されているため、マルチタスク環境やマルチECU環境における複雑なリアルタイムアーキテクチャの因果関係や時間コヒーレンスを維持することができます。RTMapsは、Windows®、Linux(Ubuntu™ LTS)、QNX®などのオペレーティングシステムをサポートしています。
RTMapsテクノロジには十分にテストが重ねられているため、たとえば、クイーンズランド工科大学やVicomtech社、その他多くのEUプロジェクトをはじめとする世界中の研究開発チームやプロトタイプ車両に使用されています。また、Navya社やValeo社などのOEMメーカーやTier-1サプライヤの開発チームでも活用されています。
自動運転とは、基本的に車輪で走行するロボットの実現を意味します。自動運転技術の発達につれて、自動車産業の焦点は、機械装置から電子工学やソフトウェアへと次第にシフトしています。多くのOEMメーカーやTier-1サプライヤは、この新しい種類のモビリティの実現に向けて本格的に取り組んでいます。多くの産業の専門家やコンサルタントの見解は、「ソフトウェアの使用により自動車産業の構造は劇的に変化し、機械工学系の企業がハイテク企業やIT企業へと移行する」という点で一致しています。
大半の自動車エンジニアはソフトウェアの専門家ではないため、特に従来型のOEMメーカーでは、この移行に際して多大な努力が必要となります。
複雑なリアルタイムシステムには、ソフトウェアメカニズムに関する豊富な専門知識や徹底的な理解が必要です。RTMapsを使用すると、自動車エンジニアリングチームはソフトウェアアーキテクチャを気にせずアルゴリズムの実装に集中し、自動運転アプリケーションに関するストラテジを正確に定義できるようになります。RTMapsはモジュール型の構造と直感的なユーザインターフェースを備えているため、コードのコピーやリライト作業を軽減することができます。それにより、エラーが最小限に抑えられ、開発リスクが低減します。
また、RTMapsを使用すると、自動運転車両の開発時にソフトウェアスタック全体にアクセスすることができます。さらに、RTMapsにより基盤となるハードウェアやセンサインターフェース、ドライバーの複雑性を排除すれば、直感的なユーザインターフェースを通じてコンポーネントベースでドラッグアンドドロップによる開発が可能です。
RTMapsでは、包括的なソフトウェアスタックが提供されており、そのまますぐに使える120以上のパッケージや600以上のソフトウェアコンポーネントが含まれています。これらの中には、カメラやレーダー、LiDAR、GPS、IMU、CANデコーダなどの多くのセンサインターフェースコンポーネントも含まれます。たとえば、RTMapsは、15以上のブランド(Velodyne、Leddartech、Ouster、IBEO、Valeo、Robosense、Sick、Hesai、Quanergy、Livox、AEye、Hokyuyo、Slamtechを含む)の60以上のLiDARモデルをサポートしています。
NAVYA ARMAは、一般的な交通に対応しながら無人走行を実現した世界初の量産車であると言われています。NAVYA社は、Intempora社のRTMapsマルチセンサ開発環境を利用して、自動運転向けの複雑な機能を開発しています。
インディアナ大学 – パデュー大学インディアナポリス校(IUPUI):自動運転向けのアルゴリズムインディアナ大学 – パデュー大学インディアナポリス校(IUPUI)では、高速センサデータ処理の利点を分析することを通じて、自動アプリケーションにおける道路輸送の安全性の向上を実現する方法を研究しています。ここでは、組み込みコンピューティング機能の中心的なリアルタイム実行プラットフォームとして、RTMaps EmbeddedおよびNXP BlueBoxが使用されています。
(dSPACE Magazine 2/2019)
RTMapsは、ランタイムの実行エンジンとなる軽量なソフトウェアであるため、クラウドやドッカー、PC上、さらにECUや組み込みターゲットを含む自動運転アプリケーションのすべての開発段階で使用できます。RTMapsはHIL(hardware-in-the-loop)シミュレーションやクラウドコンピューティングアーキテクチャでの後処理フレームワークとしても使用でき、認知およびディープラーニングアルゴリズムや自動運転向けの複雑なソフトウェア機能の妥当性確認にも対応します。
RTMapsは拡張性に優れた汎用的なモジュール型のソフトウェアであり、次世代の自動運転車両のプロトタイピングから妥当性確認に至るまで、幅広く使用されています。
RTMapsは組み込みシステムにデプロイしてリアルタイムで実行することができ、先進運転支援システム(ADAS)や高度な自動運転(HAD)向けのARMベースのアーキテクチャや組み込みターゲットもサポートしています。さらに、将来の車両向けに幅広いデータクランチング機能を提供しています。これらの機能は、NVIDIA、Renesas、NXPなどの主要な半導体ベンダーによって開発されたSoC(システムオンチップ)で動作します。そのため、量産向けに設計された最新のECU上でのプロトタイピングの初期段階から、このような設計やアプリケーションを活用できます。これにより、開発サイクルの工数を大幅に減らしたり、組み込みターゲット上での複雑なアルゴリズムのデプロイを簡素化したりできるようになります。
研究開発エンジニアリングチームの生産性および効率性の向上や市場投入期間の短縮を可能にするRTMapsは、競争の激しい分野における決定的な要素となります。
RTMapsの詳細なツールデモンストレーションや、RTMapsの活用による成功事例に興味のある方は、 個人向けのプレゼンテーションやビデオデモをご予約ください。
ビデオ(例)ibeo Evaluation Suiteは、オブジェクトラベリングの自動化や大規模なテストドライブにおける記録データの後処理、車線区分線のマップ生成を行えるモジュール型のソフトウェアです。このソフトウェアはRTMapsに統合されており、グラウンドトゥルースストリームを提供します。
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